医師になるためには、医学部医学科を卒業して医師国家試験に合格することが原則唯一の方法となっています。
したがって、社会人や他学部に進学した学生が医師の夢を諦めきれずに医学部再受験を決心することは珍しいことではありません。
しかし、医学部再受験は年齢差別を行う大学があったり、ゼロからの受験勉強で偏差値60以上まで上げる必要があるなど、ハードルは非常に高いです。
ここでは、医学部再受験でも合格することは可能なのか、また、成功するためのポイントなど詳しく解説していきます。
社会人などで医学部再受験をするか迷っている人はぜひ確認してみて下さい。
医学部再受験でも合格できる?
医学部再受験でも合格は不可能ではありません。事実、これまでにも多くの医学部再受験生が成功を収め、医師として医療現場で活躍しています。
過去には、50歳以上の年齢の方が岐阜大学医学部に入学された例も。
しかし、一般的に医学部再受験は不利だといわれることが多いのも事実です。
すべての大学がそうとはいえませんが、医学部再受験が不利だといわれる理由は単純に学力だけの問題ではなく、面接・小論文など明確な得点化が難しい分野において年齢差別が加味されたうえで合否の判断が下される可能性が否定できないからです。
『医学部再受験』というワードで検索をかけると『医学部再受験 悲惨』や『医学部再受験 失敗 その後』などネガティブなワード予測がでてくるのではないでしょうか。
たしかに、医学部再受験は簡単ではありませんし、安易な気持ちで挑戦するのは絶対に勧められません。
しかし、しっかりとした決意と緻密な計画をたてれば医学部再受験合格をつかみ取ることができるでしょう。
年齢に寛容的または厳しい大学があるってホント?
大学側が発表しない以上、年齢差別が行われていると断言はできません。しかし、合格者全体中の22歳以上の占める割合をみると、大学によって年齢に対する寛容度の傾向が見えてきます。
文部科学省のHPで『医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に関わる緊急調査の結果速報』で平成25年~30年までのデータがまとめて記載されていますので是非ご覧になってください。
今回はそちらのデータを踏まえ国立大学・私立大学別に医学部再受験に関しての寛容度を記します。年度によって若干の変化はありますが、ご参考にされてください。
国公立大学医学部の寛容度
非常に寛容度が高いと予想される大学 | 琉球大学、九州大学、熊本大学、長崎大学、島根大学、信州大学、新潟大学、富山大学、福井大学、山形大学、滋賀医科大学 |
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やや寛容度が高いと予想される大学 | 香川大学、高知大学、鳥取大学、山梨大学、奈良県立医科大学、金沢大学、札幌医科大学、三重大学、大分大学、横浜市立大学、名古屋市立大学、京都府立医科大学、山口大学、宮崎大学、和歌山県立医科大学、鹿児島大学、岐阜大学、岡山大学、広島大学、徳島大学 |
寛容度が低いと予想される大学 | 北海道大学、弘前大学、旭川医科大学、福島県立医科大学、東京医科歯科大学、愛媛大学、大阪市立大学、東京大学、京都大学、秋田大学、筑波大学、群馬大学、東北大学、大阪大学、名古屋大学、神戸大学、千葉大学、浜松医科大学、佐賀大学 |
『非常に寛容』とされる九州大学は以前は二次試験で面接を課さず、学科試験の得点のみで合否を決定していました。
2020年から面接が必須になってしまいましたが、『学力がしっかりあれば、年齢関係なく入学させる』という方針がみられます。
しかし、二次試験で生物が使えず物理必須なので注意が必要です。
奈良県立医科大学や琉球大学、岐阜大学は『やや寛容度が高い』上、後期日程も設定しているので国公立しか受験できない医学部再受験生にはおすすめです。
私立大学医学部の寛容度
非常に寛容度が高いと予想される大学 | 川崎医科大学、久留米大学、東北医科薬科大学、帝京大学、岩手医科大学、金沢医科大学、福岡大学、東海大学、北里大学 |
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やや寛容度が高いと予想される大学 | 近畿大学、関西医科大学、日本医科大学、聖マリアンナ医科大学、獨協医科大学、国際医療福祉大学、藤田保健衛生大学、大阪医科大学、愛知医科大学 |
寛容度が低いと予想される大学 | 東京女子医科大学、杏林大学、日本大学、埼玉医科大学、兵庫医科大学、産業医科大学、東邦大学、東京医科大学、東京慈恵会医科大学、昭和大学、自治医科大学、慶応義塾大学、順天堂大学 |
私立大学の『寛容度が低いと予想される大学』に関しては、国立のそれよりも厳しいものです。
医学部再受験生が難関大学を敬遠していることもありますが、上位の順天堂・慶応大学に関しては22歳以上の合格者ゼロという年度もあります。
『寛容度が高いと予想される大学』のなかでも川崎医科大学や岩手医科大学・金沢医科大学は入試問題も比較的標準なものなので難しい問題がとけなくても基本を着実に抑えられていれば合格できる大学です。
また帝京大学・東海大学は入試科目も少ないため、医学部再受験生が短期間で合格を狙うには適した大学といえます。
成功するために必要なポイント
医学部再受験合格を目指すには、ただがむしゃらに勉強し学力を上げるだけでは現実的ではありません。
現在の自分の学力・状況をしっかり把握したうえで合格のための具体的な計画をたてる必要があります。
もし、あなたが薬学部・看護学部・歯学部・生命科学部系の四年生大学をでており、大学2年生までに履修する生命科学を覚えているのならば『編入試験』も狙える可能性があります。
編入試験の受験科目は面接・英語・生命科学に加え、大学によっては高校レベルの理科や数学を課す大学もありますが、倍率も高く一般医学部試験よりも難易度が高いものになります。
医学部再受験を成功させるためには『編入』を狙う場合も一般入試を視野にいれた対策を行うことをおすすめします。
ここでは医学部再受験を一般入試で臨むために必要なポイントを記します。
私立大学医学部も選択肢に入れること
国公立大学医学部は学費が安いですが、共通テスト(旧センター試験)を課しており科目数も非常に多く優秀な現役受験生も多く出願するため難易度はとても高いものになります。
対して私立大学医学部は学費は高いですが
- 募集人数が多いことに加え、繰り上がり合格者も多くでる
- 受験科目が少ない(多くの大学が英語・数学・理科2科目)
ことから、国公立大学に比べて合格の確率は上がります。
私立大学は特に受験科目が少ないものもありますのでご参考にされて下さい。
帝京大学 | 英語必修、以下から2教科選択:国語(古文漢文除く)・数学(数Ⅲ除く)・理科(物理・化学・生物のうち1科目選択) |
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東海大学 | 英語・数学・理科(物理・化学・生物から1科目) |
また東海大学は2022年度から医学部再受験生を対象にした『展学のすすめ受験』を始めました。
多様な社会を反映して、これまでの自身の学びと背景を活かし、自ら積極的に学ぶ強い意欲を持ち続けながら他の学生とともに成長し、将来、その学識と経験をもって真に社会に貢献し、国際的にも活躍できる良医の育成を目的とします。
https://www.u-tokai.ac.jp/news-notice/42782/
とHPに書かれており短大や専門学校卒業でも受験資格があります。
また、英語・小論文・面接と受験教科も少なく、文系大学出身者でも狙いやすくなっています。2022年度の倍率は20倍以上になっている模様ですが、英語に自信があるかたはおすすめです。
22歳以上の合格者数が多い大学を受験すること
2005年に起きた国立大学の年齢による合否差別を訴えた再受験生の裁判や2018年における医学部入試不正問題以降、受験生への差別は減少していっているといえます。
しかし年齢を加味した採点が完全になくなっているという否定はできません。
再受験で確実に成功するためには過去多くの再受験生を入学させている実績をもつ大学を分析し、受験することをおすすめします。
学力を医学部合格レベルまで上げること
現役生と比べ再受験生は強固で明確な目的をもって大学受験に臨むため面接では自分の思いをしっかり伝えられる傾向にあるといえます。
しかし、私立大学医学部の多くは一次の学力試験を突破できない限り面接に進むことはできません。
しかも再受験生の得意とする面接も先から述べているように、明確な得点化は難しいのです。
よって再受験生が確実に合格するためには、現役生以上の学科試験の能力が必要になります。
面接で自分の思いを明確に言語化して伝えられること
仕事などでキャリアを積んできた医学部再受験生に対する面接は現役生に対する面接とは異なる切り口で展開される場合も多いです。
- 『なぜ現役の時に医学部を目指すという選択肢がなかったのか』
- 『これまでのキャリアが医師になってからどのように役に立つのか』
- 『周囲の理解はあるのか』
意地悪な質問ですと、
- 『落ちた場合、いつまで医学部再受験をするつもりか』
- 『うちの大学があなたを合格させたメリットは何か』
などです。
このような質問にもしっかり答えられるような対策をする必要があります。
基本的な内容を聞かれることもありますので一般的な面接内容はwikibooks『大学受験医学部面接』などを参考にされてください。
医学部再受験生の予備校の選び方
医学部再受験合格のための効率の良い勉強を行うには、独学はあまりおすすめできません。
現在の学力も重要ですが、医学部再受験の場合は自分が過去にどれだけ受験勉強と向き合ってきたかによって学習法は異なります。
自分にあう学習法を行っている予備校を選ぶことが得策です。
難関理系四年生大学を一般入試で合格した経験がある方の場合
難関大学合格するための受験の厳しさを経験したうえで再受験に臨んでいる場合は、合格するための勉強の仕方を知っているはずです。
特に現時点で大学生であるのならば入試を経験したばかりなので、自分にとっての効率の良い勉強法がすぐに進められます。
この場合は、大手予備校の集団授業でもモチベーションさえ保つことができれば学力面に関して問題ありません。
しかし大学ごとに異なる医学部再受験に関する情報はしっかり収集するべきなので、医学部専門予備校の模試やイベントなどに参加し個別に相談する機会を作ってください。
また、生物系大学出身の方は理科や数Ⅲなど未履修教科のみ個別指導を受けることをおすすめします。
推薦入試などを使ったため一般入試の勉強をあまりしたことがない方の場合
医学部専門予備校の個別指導や医学部再受験に力を入れている予備校で学習カリキュラムを完全に立ててもらいそのとおりに勉強を進めることをおすすめいたします。
勉強の仕方を自分で模索することは大切ですが、短期間で合格するためには医学部受験のプロに全てのカリキュラムをまかせることが得策です。
医専予備校の場合は多くの医学部再受験生を合格させてきた実績があるので、各々の学生に合わせた最適な授業カリキュラムを提案してくれます。
個別指導は医学部合格のための授業が展開され自分がわからないところをすぐにその場で質問できるので、医学部再受験生にとっては特に効率よく勉強できる環境です。
また、医専予備校の場合は自分以外の医学部再受験生に出会うこともできるのでモチベーションを保つには最適です。
文系大学出身・30代40代以降など社会人経験が長い場合
医学部再受験での予備校の候補の中には様々な指導方法、カリキュラムがありますが、その中でも学個別指導・少人数指導型や頻回の面談があるなど講師やスタッフとの関係が蜜なタイプの予備校をおすすめします。
というのも、ここに当てはまる人は理系科目の基礎から学び直す必要がある上に、場合によっては受験勉強という状況が久しぶりなだけに「勉強の習慣づけ」や「自分に合った勉強法の模索」という環境設定から入る必要なことも。
医学部受験はただでさえ学ぶべき量が多く求められるレベルも難関なです。そんな中で、集団授業で月に1度のチューター面接といった一般的な予備校のスタイルで受験勉強に挑んでも、他の受験生より抱える問題が多いだけに不利な状況となり試験合格までの道のりは遠くなってしまいます。
各科目の基礎から集中して学び直し、最短で医学部再受験の成功を収めるためにも、より相談しやすい環境で勉強の進捗を積極的に管理してくれる医学部予備校がおすすめです。
医学部再受験生におすすめ学習機関リスト
メルリックス
医学部再受験生の多くを私立医学部合格に導いている予備校です。
名古屋・大阪・東京に校舎をもち、オンライン個別指導も行っています。
『医学部・歯学部合格請負人のブログ』には医学部再受験生にとって貴重な情報も数多く掲載されています。
四谷メディカル
医学部再受験生の応援に力を入れている予備校です。
『完全個別カリキュラム』で生徒にあった学習法を進めてくれます。
河合塾【医進塾】
河合塾が運営する最新の医学部入試・受験対策情報を発信する合格応援サイトです。多くの医学部再受験に関しての情報もありますので会員登録をおすすめします。
費用を抑えて医学部再受験を成功させる方法
独学はなかなかおすすめできない
前述のように、医学部再受験で効率よく最短で合格させるためには、 あまり独学はおすすめできません。
例外となるのは、現役の薬学部・歯学部やそこを卒業して間もない人など。これらの人であれば、すでに医学部受験に必要な知識を大学受験や大学時代に学習している部分が多く、独学でも確かに合格の可能性はあります。
しかし、そうでない人にとっては、独学で乗り切るのはかなりハードルが高いもの。
独学となると、膨大な学習量を自己管理しながら、面接や小論文対策、さらには年齢に寛容な大学かどうか・倍率の推移はどうか・過去問は自分の得意分野に合った傾向なのかなど、必要な情報を収集するのもすべて自分でしなければななりません。
特に、医学部再受験は情報戦とも言われるほど、情報を多く手に入れられているかも合格に大きく影響します。後から、自分には相性の悪い大学だったとわかり強く後悔する受験生も珍しくありません。
そのため、受験勉強に集中するためにも、情報収集はプロに任せられる医学部予備校を活用するのがおすすめです。
予備校を「賢く」利用する
医学部再受験生の多くが国公立大学を志望しますが、その理由の多くは私立大学の学費が高いからといった経済的なもの。
しかし、医学部予備校自体も決して安価なものではありません。そのため、多くの医学部再受験生が予備校通いを敬遠するのです。
奨学金・合格保証
一部の医学部予備校には、入学時の試験などで一定水準を超える学力があると判断された場合に、学費の半分やそれ以上を免除する予備校があります。また、受験勉強中に受験する模試で好成績を収めた場合に奨学金が出る予備校も。
その他にも、1年間での合格が叶わなかった場合には学費全額を返金する合格保証を展開している予備校もあります。
これらの予備校を利用すれば、費用を抑えたりすることが可能です。
単科受講・短期講座
費用を効率よく抑える方法としては、苦手な科目だけを指導してもらうという単科受講があります。
また、夏季や冬季、試験期直前などの短期講座で効率よく重点的に学習する方法もおすすめです。
どちらの場合でも、受講している期間はその予備校の学生として扱われるため、その予備校から多くの情報を収集する事が可能になります。こうすることで、長期間かつ整理された情報を入手できるため、独学での負担や不利な部分は大きく軽減されるでしょう。
まとめ
現役受験生や多浪生はスタートラインの学力により、若干の学習方法や受験対策法は変わりますが、基本的な学習法や予備校での指導スタンスは個々人でそこまでの違いはありません。
しかし医学部再受験生は一人ひとり置かれた状況によって異なります。
医学部再受験生は『一般受験を経験したことがあるか』『何年前に受験を経験しているか』現在就職している場合は『どれだけ仕事を削り勉強に割けるか』『医学部再受験を続けるリミットは何年か』によって一人ひとり合格の確率をあげるための勉強の方法・受ける大学が変わってきます。
具体的には
『一般入試のみにしぼるのか』『私立大学のみにしぼるのか』『数Ⅲを履修するのか』『理科を1教科に絞るのか』『数学をやめて国語受験にするか』
などです。
医学部再受験生は現在の自分の状況を踏まえて早い段階で志望大学を決定しそのための勉強をぶれずに行うことが合格の鍵となります。
自分が合格するための効率的な勉強法がわからない場合は医学部専門予備校や医学部再受験専門予備校にご相談されることをおすすめします。
今後東海大学の『展学のすすめ受験』のような医学部再受験生用の受験様式が他私立大学でも取り入れられる可能性もあります。
合格の確率が上がる多くの情報を入手して対策してください。
どの大学が医学部再受験生に対して寛容なのか、面接でどのようなことをきかれたかなどに関して医学部再受験生用の掲示板やブログサイト、twitterなどでも情報取集には有効ですが、すべて真に受けるのではなく正しい情報をしっかり見極め、一人で判断できない場合は予備校などの多くの医学部再受験された先輩方のデータをもつ学習機関に頼ることが得策です。
医学部再受験での合格は決して不可能ではありません。
しかし沢山の努力が必要です。少しでも迷いがある場合はすすめません。
強い決意の上で、しっかりした戦略を練って医学部再受験に臨んでください。
代官山MEDICALの公式サイトです。
https://www.daikanyama1999.com/
ウインダムの公式サイトです。
https://windom.jp/