大学入試を経て大学生になってから、もしくは社会人として働くようになってから、医師になりたいと志した場合、医学部に入学して医師になるには2つの入試方法があります。
一つは医学部再受験として他の現役生や浪人生と共に一般入試を受けること。
そしてもう一つは、学士編入試験を受験して編入することです。
2つとも非常に難易度が高いですが、この記事では、これら2つの違い、さらにはどちらがおすすめなのかについてまで詳しく解説します。
医学部再受験とは
再受験の成功率は20%
医学部再受験とは、すでに医学部ではない大学を卒業し、社会人として働いている人などが改めて医学部受験つまり大学入試を、前期日程や後期日程などの一般入試で受験することを指します。
医学部再受験生における合格率はおよそ20%と言われていて、最近では様々な事件があったことから医学部では年齢や性別、出身地に関係なく正式な合格判定を出すようになったものの、医学部再受験生に対してあまりいい印象を抱かない大学は多く、再受験生に対して寛容な大学はそう多くありません。
例えば面接点の配点や調査書の点数化がされている大学は、再受験生はあまり受験することはおすすめしません。
さらに、大学入試で最難関と呼ばれている医学部入試ですから、現役生や浪人生であっても合格することが非常に難しいです。
そのため、少なくとも現役生より5つ以上年齢が高い社会人の方にとっては、普通の一般入試を突破するのは難易度がさらに高くなることは言わずもがなですよね。
医学部再受験生に寛容な大学はどこがあるのか
一般的に再受験生に対して寛容な大学というと、再受験生の合格率が高い、面接時に優しい、さらにはアドミッションポリシーにそのようなことを掲げていたり、大学として再受験生に対し寛容な考えを持っていることをそれとなく大学案内や募集要項などの資料に書いていたりなどと様々ですが、
- 東京大学
- 信州大学
- 三重大学
- 富山大学
- 滋賀医科大学
- 奈良県立医科大学
- 岡山大学
- 熊本大学
- 日本医科大学
- 帝京大学
- 杏林大学
以上に挙げた大学が、一般的に再受験生に寛容であると定評にある大学になります。
一般的に、私立大学は多少再受験生に寛容な大学が少ない印象です。
医学部再受験生はこれらの大学に合格することを目標にするとよいでしょう。
医学部の学士編入試験とは
倍率が非常に高い
医学部の学士編入試験とは、医学以外の分野で学士を取得、もしくは取得見込みのもので、明確な意思を持ち医師になりたい医学部に入りたいという者を、一般入試とは別に医学部の2学年次や3学年次に受け入れる制度です。
多様な人材の確保のために、入試科目として設置している学業成績はもちろんのこと、大学の時や大学院生の時にどのような研究を行ったのかについて発表を行うことや、それに関する資料を提出することが求められます。
特殊な入試方式であることから、実施している大学は特に私立大学医学部で少なく、募集定員自体も5名程度と少ないです。
それにより、狭き門となるため倍率が毎年とても高くなっています。
一般入試とは異なる科目
学士編入試験は、どの大学も必ず英語、生命科学、面接を必要とします。
それに追加で、数学や物理、化学、生物、さらには書類や小論文、課題論文、集団討論やディスカッション、発表など、大学ごとに様々な入試科目があります。
大前提として、受験に必要な条件としてTOEICの点数を求めてくる医学部もあります。
生命科学というのは、高校生物に含め、医学部や薬学部などの学生が1年次や2年次に勉強する生化学、生理学、細菌学などをふくんだいわゆる生物学と言われるものになります。
別の具体的な対策方法の記事で紹介していますが、この生命科学に関しては、大学に入ってからも必ず必要で勉強する科目であるため、大前提の基礎ができていれば学士編入試験には問題ありません。
となると問題は英語や数学、面接などの他の科目です。
英語はとにかく難易度が高く、普通の英語によりう医学的な論文を読まされます。
大学受験の高校英語とは一味も二味も違います。
面接なども、学士を取得している社会人として見られるため、失敗は許されませんし、とてもよくみられるポイントです。
必要な科目である生命科学などを勉強していれば、もちろん文系の学士をお持ちの方も受験できます。
学士を必ずしも必要としない大学もある
群馬大学、筑波大学、大分大学は修業年限4年以上の大学において2年以上の在学者(見込みの者を含む)で、指定の単位を修得した人も受験可能です。
さらに、島根大学は、歯科医師、獣医師、薬剤師のいずれかの免許を保持する方のみ3年次前期編入が可能です。
もちろん、受験する分には学士には文系理系、何の学問であるかは問われません。
学士編入試験を設置している大学一覧
国公立大学一覧
大学名 | 募集人員 | 編入する 学年と時期 |
一次試験 必要科目 |
二次試験 必要科目 |
---|---|---|---|---|
旭川医科大学 | 10名 | 2年次編入 | 生命科学、英語 | 個人面接 |
北海道大学 | 5名 | 2年次編入 | 生命科学総合問題 | 課題論文、面接 |
弘前大学 | 20名 | 2年次編入 | 基礎自然科学、数学 | 個人面接 |
秋田大学 | 5名 | 2年次編入 | 書類 | 小論文、生命科学、面接 |
筑波大学 | 5名 | 2年次編入 | 学力試験、適性試験 | |
群馬大学 | 15名 | 2年次編入 | 小論文Ⅰ、小論文Ⅱ | 面接試験等 |
東京医科歯科大学 | 5名 | 2年次編入 | 自然科学総合問題 | 面接 |
富山大学 | 5名 | 2年次編入 | 課題作文、総合試験 | 口頭発表、面接 |
金沢大学 | 5名 | 2年次編入 | 書類 | 生命科学、口述試験 |
福井大学 | 5名 | 2年次編入 | 自然科学総合(生命科学) | 面接 |
浜松医科大学 | 5名 | 2年次編入 | 生命科学、英語 | 小論文、面接 |
名古屋大学 | 4名 | 2年次編入 | 英語、生命科学を中心とする自然科学 | 小論文、面接 |
滋賀医科大学 | 15名 | 2年次編入 | 総合問題、英語 | 小論文Ⅰ、小論文Ⅱ、個人面接 |
大阪大学 | 10名 | 2年次編入 | 物理学、化学、生命科学 | 小論文、面接 |
神戸大学 | 5名 | 2年次編入 | 生命科学と英語の総合問題 | 口述試験 |
奈良県立医科大学 | 1名 | 2年次編入 | 英語、数学、理科 | 面接 |
鳥取大学 | 5名 | 2年次編入 | 基礎科学、英語、面接 | |
島根大学 | 各5名 | 2年次、3年次編入 | 書類 | 面接 |
岡山大学 | 5名 | 2年次編入 | 書類 | 生物学、科学英語、面接 |
山口大学 | 10名 | 2年次編入 | 学科試験、小論文試験 | 面接 |
香川大学 | 5名 | 2年次編入 | 自然科学総合問題 | 面接 |
愛媛大学 | 5名 | 2年次編入 | 英語、自然科学総合問題 | 個人面接 |
高知大学 | 5名 | 2年次編入 | 総合問題A・総合問題B | 面接、グループワーク |
長崎大学 | 5名 | 2年次編入 | 生命科学系科目、英語 | 小論文、面接 |
大分大学 | 10名 | 2年次編入 | (第1次選抜)書類 | 生命科学に関する総合問題、英語、個人面接、発表およびディスカッション |
鹿児島大学 | 10名 | 2年次編入 | 学力試験Ⅰ、学力試験Ⅱ | 個別面接 |
琉球大学 | 5名 | 2年次編入 | 小論文Ⅰ・Ⅱ、自然科学総合Ⅰ・Ⅱ | 個人面接 |
私立大学一覧
大学名 | 募集人員 | 編入する 学年と時期 |
一次試験 必要科目 |
二次試験 必要科目 |
---|---|---|---|---|
岩手医科大学 | 4名 | 3年次編入 | 学科試験1・学科試験2、小論文 | 面接 |
北里大学 | 若干名 | 1年次後期 | 数学、外国語、理科 | 論文、面接 |
2つの違いは?
入試科目が違う
一般入試では、共通テストを受験する場合は、国語と社会、さらに理科2科目と英語と数学が数Ⅲまで必要なのが一般的です。
それと比べて学士編入試験は、生命科学と英語がどの大学でも必要であり、大学によってはこれに追加で物理や生物化学、数学が必要になってきます。
同じ英語や数学の試験でも、求められる学力は、学士編入試験については大学で学ぶ内容であり、よりアカデミックな学力が必要です。
すなわち学士編入試験の入試問題は非常に難易度が高くなります。
これらのことから、一般入試と学士編入試験は通う予備校や対策方法も全く異なってきます。
日程も異なる
学士編入試験は、現在29の大学で行われていますが、そのうち6つの大学が5、6月、12の大学が7、8月、9つの大学が9月に学士編入試験を行っているため、受験の日程が大学ごとに数か月も異なってきます。
それに比べて一般入試は、共通テストが1月、一般入試は私立なら1月~3月、国公立も2月3月に前期試験と後期試験があります。
時期がだいぶ違うことが分かりますね。
どちらも年齢に決まりはない
再受験生にはもちろん、一般入試や共通テスト利用入試には年齢の制限がありませんよね。
学士編入試験も同じです。
多様な学生を求めるための試験ですから、学士を取得後何年たっていようが、必要な学力があり、面接や発表などで合格と判断されれば医学部に入学することができます。
もちろん、ある程度年齢による印象や、大学側が年齢の高い学生を求めていない場合もありますから、再受験生に寛容な大学などを選んで受験することをおすすめします。
難易度の差は?
入試の問題の難易度も、倍率も入りにくさも、どちらももちろん決して簡単ではありません。
しかし、学士編入試験のほうが難易度が高いと言えるのではないかと思います。
定員の少なさはもちろんですが、英語や数学などに関しては、大学で学ぶ内容であり、高校英語や高校数学とは比較できません。
面接や集団討論などに関しても、医学部の一般入試では逆転などがあまり見られませんが、学士編入試験ではかなり重視されるポイントです。
もちろん人それぞれ得意苦手がありますし、一概には言えませんが、様々な対策をしなくてはならないという点でも、学士編入試験は難易度がとても高いといえます。
社会人には学士編入試験がおすすめ?
一般入試による再受験と、学士編入試験による受験はどちらがおすすめなのでしょうか。
どちらがおすすめという話では、入学後のことを考えると、編入により1年や2年ほど短縮できる学士編入がおすすめです。
医学部は6年間と長く、その分学費もかかりますから、費用面でも学士編入試験により入学するほうができればよいと思います。
しかし、学士編入試験は必要な科目が特殊であり、対策方法も一般的な医学部入試とは異なり、さらに定員がとても少ないです。
よって、社会人の方で学士をお持ちの方は、学士編入試験の勉強を行いながら、一般入試も視野に入れることをおすすめします。
勉強しなくてはいけない科目がとても多くなってしまい大変ですが、受験する大学を限定すれば、例えば英語と数学と生命科学のみで受験するなんてことも不可能ではありません。
学士編入試験は春から秋にかけて行われ、一般入試や共通テスト利用入試は1月から3月ですから、夏や秋に切り替えて受験するという方法もよいでしょう。
年齢が高いと医学部で実際に困る?
実際に再受験や学士編入などで医学部に入学した場合、現役生や一浪生よりも年齢が大きく離れてしまうわけですが、医学部で浮いてしまったり、友達ができないだなんてことはあるのでしょうか。
この記事を現在執筆している筆者も現役医学生ですが、実際には本当に本当に年齢は関係ありません。
現役生の子も、30を超える再受験生も、年齢に縛られることなく仲良くしています。
もはや、一見年齢はほとんどわかりません。
現役で入学した人にも、達観した雰囲気を持っていて一見とても大人っぽく見える子もいれば、35歳を超えるような、一回り以上上の年齢の人でも、全くそのように見えず、学年でとてもフレンドリーで友達がたくさんいる人もいます。
実際に医学部では、大変な試験勉強や実習、レポートに追われるのですが、その中で仲間意識が生まれ、年齢などを気にする人はほぼいないと思います。
まとめ
この記事では、医学部の再受験と学士編入試験について紹介しました。
学士編入試験では、2年次などから編入できるという大きなメリットがありますが、そのレベルは非常に高く、簡単ではありません。
大学生や社会人の方は、両方の試験を併用して受験するのがおすすめです。
具体的な対策方法や通うのにおすすめの予備校について、さらに学士編入試験の2023年度スケジュールなどは、他の記事でご紹介していますのでぜひ参考にしてください。
代官山MEDICALの公式サイトです。
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