医学部は国公立私立関係なく格付けによって序列が存在し、受験生にも志望校選びに影響されています。

医学部医学科の格付けや序列の紹介と卒業後の影響を解説

医学部の基礎知識

医学部は偏差値ランキングよりも格付けや序列が将来に影響する?
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医学部には他学部にはない格付けというものがあり、昔から受験生の志望校選びの判断材料として大きな影響力を及ぼしてきました。
そこで今回は医学部の格付けについて、医学界の影響力や偏差値並びに合格難易度を含めて解説しながら、最後に受験生にとっての重要性について紹介していきたいと思います。
これから医学部受験に臨む方はぜひ確認してみることをおすすめします。

当記事の監修者:新美暖

  • 在籍大学:名古屋大学
  • 出身高校:東海高校

現在、名古屋大学医学部医学科3年生で、興味のある科は麻酔科。受験時代は防衛医科大学校、東京慈恵会医科大学、日本医科大学にも合格し、名大模試では全国1位。得意科目は数学・物理。中学受験指導の家庭教師も行っており、生徒を東海、滝、名古屋、愛知、同志社などの難関中学に合格させる。

当記事の監修者:新美暖

  • 名古屋大学
  • 出身高校:東海高校

現在、名古屋大学医学部医学科3年生で、興味のある科は麻酔科。受験時代は防衛医科大学校、東京慈恵会医科大学、日本医科大学にも合格し、名大模試では全国1位。得意科目は数学・物理。中学受験指導の家庭教師も行っており、生徒を東海、滝、名古屋、愛知、同志社などの難関中学に合格させる。

医学部の格付け・ヒエラルキーの存在と強さランキング


医学部はそれぞれ設立された時代に応じて分類されており、国公立私立あわせて82大学がそれぞれ下記一覧のように旧帝国大学、私立御三家、旧制医科大学、旧制医学専門学校、新設医大の順序で区分されています。

医学部の格付け・序列一覧

旧帝国大学 東京大学、京都大学、九州大学、東北大学、北海道大学、大阪大学、名古屋大学
旧制医科大学 千葉大学、新潟大学、金沢大学、岡山大学、長崎大学、熊本大学、京都府立医科大学
私立御三家 慶應義塾大学、東京慈恵会医科大学、日本医科大学
旧制医学専門学校(国公立) 弘前大学、群馬大学、東京医科歯科大学、信州大学、岐阜大学、三重大学、神戸大学、鳥取大学、広島大学、山口大学、徳島大学、鹿児島大学、札幌医科大学、福島県立医科大学、横浜市立大学、名古屋市立大学、大阪市立大学、奈良県立医科大学、和歌山県立医科大学
旧制医学専門学校(私立) 岩手医科大学、順天堂大学、昭和大学、東京医科大学、東京女子医科大学、東邦大学、日本大学、大阪医科大学、関西医科大学、久留米大学
新設医大(国公立) 旭川医科大学、秋田大学、山形大学、筑波大学、富山大学、福井大学、山梨大学、浜松医科大学、滋賀医科大学、島根大学、香川大学、愛媛大学、高知大学、佐賀大学、大分大学、宮崎大学、琉球大学、防衛医科大学校
新設医大(私立) 自治医科大学、獨協医科大学、埼玉医科大学、北里大学、杏林大学、帝京大学、東海大学、聖マリアンナ医科大学、金沢医科大学、愛知医科大学、藤田医科大学、近畿大学、兵庫医科大学、川崎医科大学、福岡大学、産業医科大学
2000年以降の新設医大(私立) 東北医科薬科大学、国際医療福祉大学

国公立大学医学部の格付けを詳しく確認

私立大学医学部の格付けを詳しく確認

医学部が設立された時期が古い大学ほど序列ランキングは上位になる

医学部は設立された時代が古いほど、研究面や医療業界への貢献度が大きいと評価されてきたことから格が高いと言われがちです。

したがって、歴史のある旧帝大や旧医科大は序列が高く、医学の世界では格付けが下の医学部への影響力が高いと言われています。

こうしたことから、受験生も出願する大学を決める際に医学部の格付け、いわゆる大学のブランド力を重視する人が存在するほどです。
この結果、ヒエラルキーが上の医学部は偏差値が高くなることがあります。

格付けが上の医学部は関連病院の数が多い

格付けが上位の医学部は歴史があるため、医療業界への影響力が強いことから全国各地に豊富な関連病院を有しています

関連病院が多いと、まずは就職先に困ることが少なく、また中枢を担う医療機関も多いため、臨床医としてのスキルを磨く場としては魅力。

また、関連病院が多いと昇進できるポストも多いことになるため、だたの医師ではなく役職を目指したい人にとっても好都合だと言えるでしょう。

さらに、旧帝大を始め格付け上位の医学部は昔から基礎医学の研究面でも豊富な実績があり、優秀な教授やスタッフが集まることから、研究医を目指すうえでも交付金が豊富など恵まれています。

教授の数が多い

医学部を設立する場合、教授やスタッフを用意しないといけませんが、新設の場合は外から招へいするしか他ありません。

この時、旧帝大など格付けが上位の歴史ある大学出身の人が呼ばれることになります。

そのため、新設医科大学などでは格付け上位の医学部出身の教授が多く在籍し、そこでも影響力を持っていました。

しかし、最近は新設医大でも実績や歴史を重ね、自分の大学から教授を輩出するようになってきているので、昔ほどの影響力はなくなってきています

入試難易度との関係性を偏差値ランキングで確認

医学部格付けが高い大学ほど、将来のキャリア形成が期待できることから入学難易度も高いイメージがありますが、実は偏差値が必ず高いとは限りません

首都圏や都市部にキャンパスを設置する医学部は、例え旧制医学専門学校や新設医大でも偏差値は高いのが特徴です。

下記ランキングを見ても分かるように、東京医科歯科大学は国立大学トップレベルの偏差値を誇る超難関医学部ですが、格付けをみれば旧制医学専門学校に分類しています。

また、筑波大学も同様で新設医大の格付けにもかかわらず、入試難易度は旧医科大学の地方国立大学を上回る難しさです。

つまり、医学部ヒエラルキーで下位に分類する大学なら合格しやすい、または難易度・偏差値は低いという考えは間違いとなります。

反対に、旧医科大学などに分類する歴史ある地方国立大学医学部は、歴史や実績はあるものの偏差値では中堅に位置しているのでおすすめだと言えるかもしれません。

国公立大学医学部偏差値ランキングTOP20で確認

順位 大学名(医学部医学科) 格付け
1 東京大学 旧帝国大学
2 京都大学 旧帝国大学
3 大阪大学 旧帝国大学
4 東京医科歯科大学 旧制医学専門学校
5 九州大学 旧帝国大学
6 千葉大学 旧制医科大学
6 名古屋大学 旧帝国大学
8 東北大学 旧帝国大学
8 神戸大学 旧制医学専門学校
10 北海道大学 旧帝国大学
10 横浜市立大学 旧制医学専門学校
10 奈良県立医科大学 旧制医学専門学校
13 京都府立医科大学 旧制医科大学
13 大阪市立大学 旧制医学専門学校
13 広島大学 旧制医学専門学校
16 岐阜大学 旧制医学専門学校
17 金沢大学 旧制医科大学
17 岡山大学 旧制医科大学
19 筑波大学 新設医科大学
19 名古屋市立大学 旧制医学専門学校

国公立大学医学部の偏差値ランキングはこちら

地方国公立大学では格付けと偏差値の関係はまだ残る

偏差値ランキングより都市部の医学部については、格付けが下位の大学でも偏差値は高い傾向がありました。

ただし、地方国立大学に限ってはまだまだ格付けが偏差値に影響しているケースも少なくありません。

特に、旧制医科大学は地方国立大学医学部が数多く含まれていますが、偏差値は同じ地方同士で比較すると高めです。

例えば、旧制医科大学である長崎と熊本の2大学は確かに都市部になる医学部と比較すると偏差値は低いです。

しかし、同じ九州圏の医学部で偏差値を比較した場合、下記のようなランキングとなります(旧帝大の九州大学は除外)。

九州・沖縄圏内の国公立大学医学部偏差値ランキング

順位 大学名 偏差値 ヒエラルキー
1 長崎大学 65 旧医科
1 熊本大学 65 旧医科
3 大分大学 63 新設医大
3 鹿児島大学 63 旧医専
5 宮崎大学 62 新設医大
6 佐賀大学 61 新設医大
6 琉球大学 61 新設医大

※駿台の偏差値を参考

上記のように、旧医科大学のほうが同じ九州でも偏差値は高いことが分かります。
地方で同じような立地や条件の場合、やはり今でも格付けの高い医学部のほうが偏差値は高い傾向にあるのです

旧制医専や新設医大の躍進は格付けの常識を覆す?

先に述べた通り、東京医科歯科大学は偏差値ではトップレベルにもかかわらず、格付けでは旧制医学専門学校に分類されるため難易度と大学の評価が釣り合っていないと言われることがあります。

地方国立大学医学部のほうが格付けと偏差値の関係性がありました。

しかし、格付けや学閥だけで医学部を評価すること自体が最早限界になりつつあるということを、東京医科歯科大学が逆に示し始めているとも言えます。

医療系メディアとして有名なm3.comで2016年に東京医科歯科大学の副学長が医学部の序列問題に触れたことがありました。

これによると、「院長が出身大学だから関連病院という時代ではない」と発言されていて、実際に東京都立病院の院長は、東大卒4名、慶應大卒1名に対し、東京医科歯科大学は3名と説明しています。

東京の医療界と言えば、東京大学、千葉大学、慶應義塾大学の学閥の影響力が強いことで有名ですが、今は3強の時代ではないことを証明。

また、医科歯科出身の教授も55大学133名を輩出(2016年時点)しており、格付け上位の大学が教授を輩出することは過去の話となりつつあります。

東京医科歯科大学は、運営費交付金でも医科大学としては最大規模であり、論文数でも1文献当たりの被引用数で東京大学を抜いて1位を獲得(2016年時点)するなど、偏差値と同じように医学業界ではトップクラスの実績を誇る規模と実績を誇るまでに成長。

国立と言う割安な学費に加え、東京の中心地(文京区)にキャンパスを設置する東京医科歯科大学は、格付け上位の慶應を蹴って入学を決める受験生も少ないほど人気が高まっています。

他にも、旧医科で中国・四国地方で大きな影響力を持つ岡山大学(旧医科)がありますが、広島大学(旧医専)のほうが偏差値は上です。

しかも、国は世界レベルの研究を行う「スーパーグローバル大学」として岡山大学ではなく広島大学を指定するなど、ヒエラルキーに関係ない評価が行われています。

格付けと偏差値がミスマッチのように、医学部としての評価や実績においても格付けとは相反するものになりつつあるのです。

私立大学は学費の安さが偏差値に影響


国公立大学医学部は、今でも格付けを気にして志望校を決める受験生が多いですが、私立大学医学部の場合は少し事情が異なってきます。

というのも、私立大学医学部の場合は、国公立大学と比較して学費が非常に高額。

したがって、私立大学医学部の場合は、格付けの高さよりも学費の安い大学のほうが人気および難易度・偏差値が高い傾向にあります

例えば、旧制医学専門学校の順天堂大学医学部は学費を大きく値下げたことで優秀な受験生が殺到し偏差値が急上昇。

その結果、私立御三家に匹敵する難易度・偏差値を誇る医学部として今では有名です。

また、私立大学医学部の学費値下げは順天堂大学以降は各大学が追従し、学費を大きく値下げた医学部ほど偏差値が上がり合格難易度も上がりました。

6年間の学費総額2000万円前後の順天堂、昭和、東邦の3大学が偏差値を伸ばし、御三家に次ぐ「新御三家」として新たな格付けとしてメディア等で取り上げられることもあります(※昭和は500万円値上げで2700万円になったので今後は注意)。

それくらい私立は学費の安さが難易度に大きく影響してくるのです。

つまり、高額な学費の私立は偏差値が低いため経済的余裕があれば穴場となり得ます。

以上のように私立はヒエラルキーの影響があまりなく、学費が偏差値や入試難易度に影響しているのが特徴です。

私立大学医学部の偏差値と学費の関係【2020年度】

順位 大学名 河合・駿台平均偏差値 学費【6年間】 系譜
1 慶應義塾大学 73.3 2,204万円 私立御三家
2 東京慈恵会医科大学 68.5 2,250万円 私立御三家
3 順天堂大学 68 2,080万円 旧制医学専門学校
4 日本医科大学 67.5 2,200万円 私立御三家
5 防衛医科大学校※1 66.8 実質無料※2 新設医大
6 大阪医科大学 65.8 3,140万円 旧制医学専門学校
7 自治医科大学 65.3 実質無料※2 新設医大
7 昭和大学 65.3 2,700万円 旧制医学専門学校
9 産業医科大学 65 実質1,123万円※2 新設医大
10 関西医科大学 64.8 2,770万円 旧制医学専門学校
11 東邦大学 63.8 2,580万円 旧制医学専門学校
12 国際医療福祉大学 63.5 1,850万円 新設医大
13 日本大学 63.3 3,310万円 旧制医学専門学校
14 東京医科大学 62.8 2,940万円 旧制医学専門学校
15 近畿大学 62.5 3,582万円 新設医大
16 愛知医科大学 62 3,420万円 新設医大
17 東北医科薬科大学 61.5 3,400万円 新設医大
17 杏林大学 61.5 3,700万円 新設医大
17 東京女子医科大学 61.5 4,621万円 旧制医学専門学校
17 藤田医科大学 61.5 2,980万円 新設医大
17 久留米大学 61.5 3,620万円 旧制医学専門学校
22 北里大学 61 3,890万円 新設医大
22 帝京大学 61 3,938万円 新設医大
22 東海大学 61 3,500万円 新設医大
22 聖マリアンナ医科大学 61 3,440万円 新設医大
26 兵庫医科大学 60.8 3,700万円 新設医大
27 福岡大学 60.5 3,760万円 新設医大
28 岩手医科大学 60 3,400万円 旧制医学専門学校
28 金沢医科大学 60 3,950万円 新設医大
30 獨協医科大学 58.8 3,660万円 新設医大
30 埼玉医科大学 58.8 3,700万円 新設医大
32 川崎医科大学 56 4,550万円 新設医大

※1:大学校であり、明確には国公立でも私立でもない
※2:実質の負担額であり、卒業後の条件がクリアできなければ学費全額返還義務を負う

上記のように、偏差値ランキングで私立大学をまとめた場合、格付けや序列に関係なく学費が高い医学部ほど偏差値は下がり下位に位置する傾向にあります。

なお、偏差値ランキングで17位に位置する東京女子医科大学は学費を1,100万円値上げて2021年度から4,621万円まで増額。

今後は偏差値にも大きく影響が出ることが予想され、難易度の変動があるかもしれません。

格付け上位の医学部に入るべきか?


以上のように、国公立大学医学部を中心に格付けは今でも存在しており、出願の際に気にする人もいます。
では、医学部を受験する際に本当に格付けを気にして志望校選びをしたほうが良いのでしょうか。
結論としては、以下の受験生は医学部の格付けを参考にして志望校選びをしたほうが良いかもしれません。

教授や要職を目指したい

教授や関連病院をはじめとした医療機関の要職に就いているお医者さんは、やはり全国的に見ても旧帝大をはじめ、格付け上位の出身の人が多いようです。

したがって、教授や要職就任などのポジションを狙うのであれば、医学部の格付けは重要になります。

ただし、それくらいにしか格付けはあまり参考にはなりません。

無駄に偏差値が高く合格難易度が上がるくらいなら、ヒエラルキーは低いけど実績が高く偏差値も手ごろな医学部を確実に合格するほうが賢明です。

合格できる大学を受験することがまずは一番

格付けの高い医学部を目指しても合格できなければ、そもそも医師にもなることができません。

また、ヒエラルキー上位の医学部に入ったからと言って高収入が約束されることもなく、お金を稼ぎたいなら医局を去って開業したほうが儲かることも多いです。

さらに医局で言えば、格付け上位の医学部は昔から主要な医療機関が関連病院になっていることも多かったので、キャリア形成としては有利でした。

しかし、2004年度から始まった新臨床研修医制度の導入により、マッチング制度が始まったことで、研修医は全国の研修指定病院を自由に選択できるようになり、医局に縛られないキャリア形成が実現しています。

医局の存在が大きかった昔に比べると、マッチング制度の開始によって医学部に合格できれば、入学後の頑張り次第で自分の希望が通りやすくなってきています

医学部の格付けに囚われず、合格を第一に考えて受験勉強及び進路決定を行いましょう。

 
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