医学部入試の難易度は高いと世間では言われていますが、どれほどの難易度かを具体的に把握している人は多くはありません。
そこで、これから医学部受験を考えている人に向けて、他学部との比較を通してどれほどの難易度なのかを掴んでもらいたいと思います。
便宜上、主に偏差値を使って説明しますが、特に私立の医学部や単科医科大はクセのある問題を出す大学も多いため、偏差値上の難易度よりも高く見えたり、偏差値の高い医学部よりも偏差値の低い医学部の方が個人の相性も相まって難しく感じる場合も多々あります。逆に、偏差値が高いとされる医学部の問題が案外解けそうだと思える場合も起こりうるわけです。
そのため、偏差値で大枠のイメージを掴むことは有用ですが、志望校を決める際は赤本が豊富に揃っている書店や予備校の資料室等で実際の入試問題を見て、勝負できると思える大学を探すことも非常に重要なことなので是非実践して頂ければ幸いです。
私立の理工学部と医学部の難易度を比較
私立大学医学部の難易度は、河合塾のデータによると最も偏差値の低い川崎医科大学で62.5となっています。
この偏差値62.5を基準として、他学部では医学部に匹敵する難易度を誇る大学はどこが該当するかをまとめてみました。
医学部以外で、偏差値62.5以上の私立理工系学部は、早慶理科大に加えてICU(国際基督教大学)のみとなっています。
つまり、早慶合格レベルの偏差値がないと私立の最も難易度が容易な医学部でさえも合格できないということになります。
昔は偏差値50台あれば私立大学医学部があったり、裏口入学も可能だと言われていたりした時代がありましたが、今は難易度の上昇によって無理となっています。
特に私立の場合は、学費の値下げラッシュによってサラリーマン家庭でも私立の医学部が目指せるようになったことも受験者数の増加および難易度の上昇に影響しています。
偏差値60以上の理工学部一覧(2022年)
大学名 | 学部 | 学科 | 偏差値 |
---|---|---|---|
早稲田大学 | 先進理工 | 生命医科学 | 67.5 |
慶應義塾大学 | 理工 | 学問A・B・C・D・E | 65 |
国際基督教大学 | 教養 | アーツサイエンスA | 70 |
早稲田大学 | 教育 | 理科ー生物 | 62.5 |
基幹理工 | 学系Ⅰ、Ⅱ | 65 | |
先進理工 | 物理、化学・生命化学・応用化学 | 65 | |
創造理工 | 総合機械工、社会環境工、環境資源工 | 65 | |
教育 | 数学 | 62.5 | |
創造理工 | 経営システム工 | 65 | |
先進理工 | 応用物理、電気・情報生命工 | 65 | |
東京理科大学 | 理 | 応用化学B方式 | 62.5 |
工 | 建築B方式 | 62.5 |
2022年度の偏差値から見てみると理工系の偏差値62.5以上は意外と多く、難易度の高さがうかがえます。
なかでも早稲田大学と慶応義塾大学の2大学が多くの学部で高い難易度を誇っています。
医療系は医学部以外の場合、偏差値60以上は慶応義塾大学の看護医療学部や薬学部のみとなっており、理工系のほうが多いのが特徴です。
特に医学部のない早稲田大学が設置する生命医科学は医師国家資格を得られませんが、理工学部と医学部の科目を幅広く学べる学部として人気が高く、他の医学部に負けない難易度を誇っており、質の高い対策が必要です。
国公立大学理工学部の合格難易度は?
国公立大学医学部も私立と同じような方法で他学部との難易度を比較していってみましょう。
まず、河合塾のデータによると最も偏差値が低い医学部は秋田大学の60だったので、他の国公立理工系の偏差値60以上をまとめています。
偏差値60となると私立に比べて候補になる大学は多いですが、旧帝大などトップクラスの国公立大学がほとんどを占めています。
なので、地方の医学部でも学費の安い国公立を目指すのであれば、最低でも旧帝大や都市部の難関国公立大学理系学部に合格できる学力が必要となります。
国公立の医学部は学費が6年間総額350万円程度と私立に比べて非常に安いため、志望できる家庭が多く難易度や競争率も高い数字を推移しています。
しかも、近年は将来安定した雇用と高い報酬が期待できる医師とう職業に魅力を感じる成績優秀な受験生が多く、東大や京大の理工に合格できる可能性があっても、地方の国公立医学部を目指す傾向にあります。
それほど、今の受験生にとって医学部は非常に人気が高く、以前に比べて高い難易度と競争倍率となっています。
偏差値60以上の理工学部(前期日程)一覧(2022年)
大学名 | 学部 | 学科 | 偏差値 |
---|---|---|---|
東京大学 | 理科一類 | 67.5 | |
理科二類 | 67.5 | ||
京都大学 | 理 | 理学 | 65 |
工 | 物理工、情報、建築、電気電子工 | 65 | |
東京工業大学 | 第1類~第7類 | 65 | |
京都大学 | 工 | 地球工、工業化学 | 62.5 |
大阪大学 | 理 | 生物(生物科学)、物理、化学、数学 | 62.5 |
基礎工 | システム科学、情報科学、電子物理科学、化学応用科学 | 60 | |
工 | 応用自然科学、応用理工、電子情報工、地球総合工、環境・エネルギー工 | 60 | |
横浜国立大学 | 都市科学 | 建築 | 62.5 |
横浜市立大学 | 国際総合 | 国際都市学系B方式 | 62.5 |
名古屋大学 | 工 | 機械・航空宇宙工、マテリアル工、エネルギー理工、環境土木建築 | 60 |
九州大学 | 芸術工 | 音響設計 | 60 |
東北大学 | 工 | 機械知能・航空工 | 60 |
理 | 物理系、数学系、生物系 | 60 | |
北海道大学 | 総合理系 | 物理重点 | 57.5 |
神戸大学 | 工 | 建築 | 60 |
東京都立大学 | 都市環境 | 建築 | 60 |
お茶の水女子大学 | 理 | 化学 | 57.5 |
国公立大学の理工学部になると、旧帝国大学や都市部の大学を中心に偏差値60超えが多く、医学部に匹敵する難易度が必要となります。
ちなみに上図のランキングでは、やはり東京大学を筆頭に京都大学などの旧帝大学が後に続く形となっていま、さらに後期試験になるとより難易度が上昇する大学が増えていきます。
医学部は他学部より留年率が高い
せっかく超難関の医学部受験を突破できたのに、ホッとする間もなく忙しい学生生活が始まります。
特に近年は、専門教育が前倒しで始まるカリキュラムに変更されているため、1年次から高度な授業が始まり予習・復習に明け暮れることになります。
また、臨床実習の平均時間数も増えており、覚えることや理解することなど多くのことが短期間で求められるようになりました。
他学部なら試験に落ちても再履修をしたり別の授業を取って一定の合計の単位数を確保できれば進級できますが、医学部の場合は1単位でも落とせば留年が決定する上に翌年全ての科目を再履修させる大学が存在します。
ただし、再試や再再試を何度も行ってくれたり、1単位や2単位までの落単であれば仮進級扱いとして翌年の学年の勉強と並行しながら去年の学年の落とした試験をクリアすることで留年を回避させてくれる大学も色々あります。
しかも、1学年で何十人と留年してしまう大学もあるので、合格できたからと言って喜んでいる余裕はありません。
私立の場合は学費が高額であるため、1年留年するだけで家計への負担は非常に大きくなり退学を選ぶ人も少なくありません。
偏差値から見て医師国家試験合格率が高い医学部の場合、合格できそうな学生以外をふるいに落として高い合格率をキープさせている大学もあります。
合格できても医師になれなければ医学部に入った意味がないので、志望校選びの際は進級判定も注意したいポイントとなります。
他にも、留年する人のなかには医師という職業の現実を知ってモチベーションが下がるケースも意外と多く、特に近年は医学部受験ブームも相まって腕試し感覚で医学部を受験してしまう人も多いようです。
この場合、医師という夢を実現するよりも超難関試験に合格した、医学部生というステータス欲しさに進級してしまったため、医療人としての覚悟が足りておらず勉強についていけなくなってしまうそうです。
医学部に入った後が本当に大変だと言われているので、例え高い学力があって入試に合格できたとしても、本当に医師になりたい気持ちがなければ厳しい医学部生活および研修医時代を突破することは難しいでしょう。
ただし、試験前の2週間(重い科目なら3〜4週間程度)からコツコツと準備していけば大抵クリアできるものなので、受験生の時のように毎日勉強しなければいけないわけではなく、メリハリをつけて過ごせば留年リスクは軽減可能です。
逆に留年してしまう人は本当に勉強しない人や、一夜漬けでクリアしようとする人、本試験は模試・再試が本試と思っている人がほとんどです。ただし、一部、勉強しても報われないような、本当に理不尽な期末試験を行なって学年の大半を再試送りにする教授が多くいる大学も存在するので、その辺りもリサーチした方が良いでしょう。
他学部は学力勝負の色合いが濃い
医学部は私立でも国公立でも二次試験で小論文や面接試験が課されているため(九州大学は面接なし)、純粋な学力勝負ではありません。
したがって、面接が苦手、または小論文が苦手といった人は、医学部よりも理工学部のほうが同じ難易度であっても合格の可能性は高くなります。
しかも、面接試験や小論文の場合は配点が設けられていないことも多いので、客観的に試験内容の難易度を図ることが難しい側面もあります。
実際に、話題になった医学部不正入試問題では、英語や数学などの学科試験ではなく、小論文などで加点などが行われ点数調整を行っている大学が明るみになりました。
先行き不透明な経済社会のため、就職や生活に困らない医学部人気は衰えることを知りませんが、ITやAI技術など理系の人材が求められる昨今では、理工学部出身者の活躍の場は多岐にわたるので英語や資格取得で安定した地位を得ることも不可能ではありません。
まとめ
医学部に入るには最低でも早慶理工を突破できる実力は必須であることはお分かりいただけたと思いますが、現実には旧帝大非医学部の難関な学科を越えれる程度の実力が求められる医学部の方が数は多いです。
特に、難関大学の医学部を突破する人は東大理一・二あたりを受験しても合格していたであろう人が多いです。ただし、医学部の受験校選びで偏差値以外に重要視する点があります。
それは、
- 偏差値を抜きにして赤本等で勝負できると思える医学部をよく探す
- 在学生の声を調べて進級や環境の実態を把握する
ということです。
医学部入試の問題はクセが強いことが多いので人によって各大学との相性は様々です。
そのため、「ここなら戦える」と思えて、かつ、進級しやすい、あるいは、学びたいと思える環境の医学部をなるべく多く見つけて受験校を決定するのが好ましいです。
とはいえ、医学部は入学後はひたすら暗記の6年間になるため、どの医学部に入ってもある程度以上の努力や根気は求められるので、その辺りも十分に考慮した上でどのような受験・大学進学を望むのか決めましょう。
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