獣医学部の新設問題の現状や医学部医学科との違いについても解説しています。

獣医学部の新設問題や医学科との違いを紹介

医学部の基礎知識

加計学園の獣医学部新設問題の現状は?医学部医学科との違いも解説
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今から約5年ほど前、世間をにぎわせた「加計学園問題」。

当時の安倍首相が関わっていたことで日々のワイドショーは持ちきりでしたが、この問題で肝となってくるのが「獣医学部の新設」というものです。

しかし、獣医学部は医学部医学科以上に謎に包まれた学部といっても過言ではありません。

今回の記事では、加計学園の問題をおさらいしつつ、獣医学部について詳しく紹介していきます

それでは、獣医学部について見ていきましょう!

加計学園問題とは何だったのか?新設問題の現状

加計学園問題とは何だったのか?新設問題の現状
まず獣医学部についての紹介の前に、加計学園問題についておさらいしていきます。

加計学園問題は、加計学園という学校法人が運営する岡山理科大学が、愛媛県今治市に獣医学部を新たに設置する際に浮上した問題です。

元々、「獣医師数は十分に足りている」として、文部科学省は昭和59年以来獣医学部の新設を規制しており、定員も全国あわせて一定に保たれていました。

しかしながら、今治市が国家戦略特区に指定され規制緩和がなされたこともあり、平成30年の4月に学校法人加計学園が今治市に獣医学部を新設することが決まったのです。

この新設にあたって、今治市の他に京都府も獣医学部新設に手を挙げましたが、結果として今治市が新設地になりました。

この選考過程で、文部科学省・政府が京都府と今治市を両立して考えるのではなく、今治市に獣医学部を新設する前提で考えていたのではないか、ということが問題となりました。

また、京都府を選考対象から除外するために募集条件を途中で変更したことや、加計学園の理事長と安倍首相の旧知の関係が露呈したこと、文書の中に首相への忖度とみられるような記述があったことなどが国会で論争になりました。

結果的に、2017年の11月に岡山理科大学獣医学部の新設が認可され、2019年4月に開学に至りました

以上が、加計学園問題の経過と現状になります。

獣医学部とは?概要を解説

獣医学部とは?概要を解説
それでは、獣医学部の詳しい紹介をしていきます。

全国にある獣医学部のある大学は、以下の通りになります。

  • 北海道大学
  • 帯広畜産大学
  • 岩手大学
  • 東京大学(理科Ⅱ類で入学)
  • 東京農工大学
  • 岐阜大学
  • 大阪公立大学
  • 鳥取大学
  • 山口大学
  • 宮崎大学
  • 鹿児島大学
  • 酪農学園大学
  • 北里大学
  • 麻布大学
  • 日本大学
  • 日本獣医生命科学大学
  • 岡山理科大学

以上17大学に獣医学部が存在し、国公立大学が11大学、新設された岡山理科大学獣医学部を含め私立大学が6大学となっています。

入試難易度

獣医学部全体の定員は全国で1100名ほどになっており、他の学部と比べると比較的狭き門といえるでしょう。

河合塾・駿台の資料から入試難易度を見ると、次のようになります。

大学名 河合塾偏差値
(カッコ内共テ得点率)
駿台偏差値
東京大学理科Ⅱ類 67.5(84%) 66
北海道大学 65.0(84%) 63
東京農工大学 62.5(80%) 60
大阪公立大学 60.0(75%) 58
岐阜大学 62.5(74%) 59
山口大学 62.5(73%) 59
宮崎大学 62.5(73%) 60
帯広畜産大学 60.0(72%) 59
岩手大学 60.0(72%) 59
鹿児島大学 60.0(72%) 60
鳥取大学 60.0(68%) 58
日本獣医生命科学大学 62.5 58
日本大学 60 56
北里大学 57.5 54
麻布大学 57.5 55
酪農学園大学 55 51
岡山理科大学 55 50

このように、最難関の獣医学部は非常に難易度が高く国公立大学医学部医学科に匹敵するほどの難易度になりますが、標準的な国公立大学理系レベルの獣医学部もあり、難易度はまちまちといえるでしょう。

学費

続いて、獣医学部の学費を見ていきます。

国公立大学に関しては、入学金・年間学費が全国全学部殆どが一律の為、大阪府立大学(6年総学費約470万円)を除き、いずれの場合も6年間の合計学費は350万円ほどになります。

一方、私立大学は医学部医学科ほど高くありませんが(医学部医学科は私立大学の場合、最安でも6年で1800万円以上かかります)、おおよそ6年総学費は1300万円程度になります。

獣医になるには?学生生活や卒業後の進路を解説

続いて、獣医学部の学生生活について見ていきましょう。

医学部医学科との違いも強調しながら、紹介していきます。

学生生活

まず、学部は医学部医学科や歯学部と同じく、6年間あります

その中で学ぶのは、高校生物よりかなり発展した解剖学・組織学・生理学の他、獣医となってからの診療に関わってくる病理学・薬理学・微生物学、より動物に関わるところで言うと寄生虫学なども学ぶ必要があります。

学ぶ内容としては基礎的なものは医学部医学科と同じですが、寄生虫学や魚病学など獣医学部ならではの分野があるほか、臨床科目となってくると大きな違いが出てきます(馬についての科目があったり)。

それらは医学部医学科の科目同様非常に難易度が高く、試験前は多くの時間を勉強に費やす必要があるそうです。

また、それらの他に解剖学や薬理学の各種実習も存在し、実際に体を使って学ぶこともあります。

実習は座学よりも身近に五感を使って学ぶことができますが、時間的拘束が多く、かつレポート等の課題も存在することから、学生生活のなかで大きな立ち位置を占めてくることになるでしょう。

大きな関門

獣医学部では上記のような科目の他にいくつか突破しなければいけない大きな関門が存在します。それが以下の3つです。

  • Vet CBT/OSCE
  • 研究室配属
  • 獣医師国家試験

Vet CBT/OSCEは、基礎・臨床の座学終了後、獣医学部における臨床実習の前に受ける試験で、自動車免許における仮免許のような立ち位置のものと考えて貰って構いません。

医学部医学科でも同様の試験が存在します。

CBTはComputer based Testingの略称であり、コンピュータにて行います。

試験日程は大学ごとに違いますが、問題が数千問~数万問クラスのプール問題の中から学生ごとにランダム抽出して出題されるため、学生ごとに問題が違うのが特徴です。

問題は合計300問、そのうち基礎科目(解剖学・発生学など)が100問・病態獣医学が100問・応用科目40問・臨床科目60問となっており、基礎科目の重点が高くなっています(ちなみに、医学部医学科のCBTは320問であり、臨床科目の重点が比較的高くなっています)。

OSCEはObjetctive Structured Clinical Examinationの略称であり、実技試験と考えて貰えば大丈夫です。

飼い主の方への面接の方法や、動物の模型を使っての身体検査、皮膚の縫合や結紮などの技能を検査します。

このCBT・OSCEの二つの合格することで、晴れて獣医学部の臨床実習に進むことができます。

研究室配属は、3年時に行われる場合と、臨床実習と同時期に行われる場合があります(後者は卒業研究扱いとなることも多いです)。

いずれも、少人数での研究室配属となり、自分の興味が最優先になるのはもちろんのこと、研究室の雰囲気・時間的余裕など様々なことを勘案して考える必要があるでしょう。

この研究室配属ですが、医学部医学科の場合は必須でないことが多く(カリキュラムに研究室配属が規定されている大学の方が珍しいと言えます)、より基礎研究に力を入れている獣医学部に特有な制度といえるでしょう。

そして6年間の最後に、獣医師国家試験が行われます。

  • 出願:1月上旬
  • 試験日:2月中旬(平日)
  • 合格発表:3月中旬
  • 試験会場:北海道(札幌)、東京、福岡

問題としては合計330問で構成されており、うち必修問題が50問(合格基準7割)、そのほかの学説・実地問題が前者160問・後者120問(合格基準6割)となっています。

毎年1300人程度が受験し、1000人程度が合格します。その合格率は平均83%と、弁護士試験や歯科医師国家試験よりは高いですが、医師国家試験(合格率9割ほど)とは多少開きがあります。

なお、2022年に行われた獣医師国家試験で、新卒者の合格率の高い大学は以下の通りです。

  1. 岐阜大学 97.1%(34/35)
  2. 鳥取大学 96.9%(31/32)
  3. 東京農工大学 94.3%(33/35)
  4. 北里大学 94.3%(115/122)
  5. 日本獣医生命科学大学 93.9%(77/82)

この獣医師国家試験に合格することで、獣医師としてのキャリアを歩むことができます。

獣医になった後は?

さて、ここからは獣医となった後のキャリア形成について見ていきます。

獣医になった後の進路は、大きく分けて3つあります。

  • 臨床獣医師
  • 公務員/企業就職
  • 進学

臨床獣医師

このうち、いわゆる「獣医」と一般的に見なされるのが最初に記した臨床獣医師です。

獣医学部で扱う対象となる動物は小動物(犬・猫など)、大動物(馬・牛など)、そしてそのほかの動物(イグアナをはじめとする)になるわけですが、このうち小動物を取り扱う獣医師となる場合が多いようです(町にある動物病院がこれに当たります。約3割ほどがこの進路を選ぶようです)。

小動物臨床を選んだ場合、動物病院で卒後の臨床研修を行います。そして勤務医・もしくは開業といった形でその後のキャリアを歩んでいく事になります。

その他にも大動物の臨床を選ぶ獣医も多く存在します。

畜産分野で活躍することとなるこの獣医は、開業する場合があるのはもちろんのこと、農業との関連からJAなどを母体として開設されている診療施設に勤務して働くという形も多いです(この場合、各団体・診療施設の臨床研修プログラムに準じて卒後臨床研修を行うことになります)。

続いて、公務員・企業就職についてです。

4~5割ほどがこの進路を選択することから、獣医学部の中ではポピュラーな進路となっています。

公務員の道

公務員として働く場合、地方公務員・国家公務員の区別が存在します。

地方公務員の獣医は、食肉衛生検査所にて安全性を検査するという獣医にのみ許された業務を行うというパターン・家畜保健衛生所で家畜における伝染病の検査・発生予防を担うというパターンがあります。(特に地方公務員の場合は求人に対して応募が少ない状況が続いており、人手不足といった状況になっているようです。)

国家公務員の場合、多くが農林水産省、また厚生労働省などにもキャリアパスが存在し、農林水産省においては家畜や食肉の検疫業務、厚生労働省では食品安全基準の設定や人獣共通感染症の予防対策などを行っています。

その他にも、国家主導の研究機関などで働いている獣医も多数存在します(動物衛生研究所や国立感染症研究所など)。

企業へ就職

企業就職は、さらに広い進路を選ぶことができます。

水族館・動物園での獣医としての勤務は、その最たる例ということができるでしょう。

一つの施設に勤務できる数こそ限られてはいますが、珍しい動物を扱うことで専門性も磨くことができます、

他にも、製薬企業や食品企業などで研究活動を行う獣医が存在します。

とくに製薬企業に於いては、実験動物の管理に獣医の力が必要不可欠である為、獣医の受け入れ数が多くなっています。

大学院へ進学

最後の進路は、進学になります。

大学で研究し、教員のポストを得るにあたっては、博士号が必要になります。この博士号は獣医学部の6年間を終えただけでは得られないため、さらに大学院に進学し、研究を重ねていく必要があります。

ここで、学生の研究室配属で行った研究をさらに展開していくのもいい選択肢でしょう。

医師と比べて、獣医学部卒業後は獣医が様々な選択肢を取っています

自分の興味関心と照らし合わせながら、進路を選びましょう。

新設問題の現状と獣医学部の内容まとめ

この記事では、ひと昔前に話題となった獣医学部新設に関する加計学園問題を切り口にして、その問題の現状から、獣医学部の6年間の紹介、そしてその後のキャリアパスについて、医学部医学科と比較しながら紹介してきました。

獣医学部に入ることは決して広くは無い門ではありますが、岡山理科大学獣医学部の開口によって少し門戸が広がり、かつ最近の需要拡大によって獣医の必要性も叫ばれています。

この記事を読んだ皆さんが少しでも獣医学部に関心を持つこと、そして獣医学部志望の受験生の皆さんに有益な情報を共有することができたなら幸いです。

 
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