近年の日本の不景気によってより一層、高収入かつ安定した社会的地位を得ることのできる医者を目指す学生は増えてきています。
しかし、特に私立大学医学部では入学金と6年間の授業料などを合わせると2000万円を軽く越してくるところがほとんど。
経済的に厳しいとあきらめている学生もいるのではないでしょうか。
実際には多くの医学部で奨学金制度を導入しており、経済的に難しいと考えている場合も奨学金制度を使えば学費をかなり抑えたうえで医者になることが可能です。
奨学金制度は3つに分かれている
経済的に大学に通うのが困難な学生向けの奨学金制度ですが、ひとえに奨学金といっても全部同じような形式ではありません。
まず奨学金制度には大きく分けて「貸与型」「給付型」「免除型」の3つに分けられ、それら将来返還義務があるかや現金を受け取るかで違いがあります。
これらの違いを把握しておくことは、奨学金を利用するうえで重要です。
貸与型奨学金
一番メジャーな奨学金制度で、月に一定の額だけ大学や各自治体から貸与させてもらえる制度です。
あくまでも貸与なので、将来的には借りた額を返還する義務が生じることになりますが、医者になれば年収も1000万は軽く越すので他学部と比べて返済に困ることはないでしょう。
また、一部の貸与型奨学金の場合は課される条件を満たせば返済免除となるものもあります。
給付型奨学金
給付型奨学金の場合は一定額を給付、すなわち将来返還する必要がなくお金をもらえるタイプの奨学金です。
返還義務がない代わりに条件が厳しいことや人数制限があることが特徴です。
免除型奨学金
免除型奨学金とは、入学金や初年度の授業料といった学費のうちの一部を免除してもらえる奨学金です。
主に入学試験の成績や学内での成績などをもとに免除される形が多いです。
月に一定額もらえる訳ではなく、払うべき学費を一部免除してもらうという形式をとっています。
医学部には奨学金制度がたくさん!?
学費が非常に高額で、一般家庭では通学は不可能だというイメージを持つ方がいますが、医学部には奨学金制度がたくさんあることをご存じですか。
ここでは医学部に実際にある奨学金制度についてみていこうと思います。
地域枠
地域枠とは卒後9〜12年の間、特定のへき地や医療機関に勤めることを義務付けられた医学部入学枠であり、各自治体によって修学資金の貸与が行われる貸与型奨学金です。
卒後の一定期間の勤務によって貸与金の返還免除を受けることができることがポイントです。
また、地域枠は医学部入学枠の中では入りやすいと言われており、勉強面・経済面ともに医者になりたい学生にとってはおすすめです。
特待生制度
入学時の試験成績や医学部入学後に特に優秀な成績を修めている学生に対し、入学金の一部や授業料の一部を減免する免除型の奨学金です。
例えば昭和大学医学部ではⅠ期の正規合格者は全員特待生として、初年度授業料の免除となります。
勉強面の実力に自信がある場合は、積極的に狙っていくといいでしょう。
各医療機関からの奨学金
各医療機関や民間医療法人からも地域枠と同様な奨学金制度があり、経済的に困窮している医学部生をサポートしています。
各医療機関からの奨学金は貸与型奨学金であり、医学部在学中にかかる費用を貸与してもらえます。
また、地域枠と同様に卒後9〜12年ほど、各医療機関のグループ病院で勤務することで返還義務が免除されます。
地域枠よりも柔軟に勤務地を選択できる余地があるので、経済的に厳しいが将来のキャリアも選択したいと考える学生はおすすめです。
矯正医官修学資金
これは法務省が設置している貸与型奨学金であり、全国の刑務所や留置所といった矯正施設において働く医師を養成するための奨学金です。
医学部医学科3年生以上を対象に月額15万円を上限に貸与され、一定の期間指定された刑務所または留置所で医師として勤務した場合に、全額返還免除となります。
各種手当が充実しており、他の病院での勤務も勤務に支障が出ない程度であれば兼業可能なので、こういった奨学金の中ではかなりフレキシブルに対応できることが魅力です。
おすすめの医学部はこちら!
奨学金を利用することでかなり経済的に通いやすいと言える医学部について厳選して一覧にしたので参考にしてください。
今回挙げた大学以外にも、奨学金制度の利用によりかなり学費を抑えることができる大学は多いので、志望校の奨学金制度について調べておくとよいでしょう。
自治医科大学
自治医科大学は栃木県下野市薬師寺3311-1に所在する私立大学医学部です。
この大学の特徴は地域医療に従事する医師を養成するために設立されたことであり、入学者全員に学費全額分を貸与することです。
したがって、実質の学費をゼロに抑えることが可能であることが最大の魅力です。
ただし地域枠と同様に、卒後9年間は指定されたへき地・医師不足が深刻な地域の病院での勤務が紐付きとなっています。
産業医科大学
産業医科大学は福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1-1に所在する私立大学医学部であり、企業の産業医を養成するために設立されています。
この大学では卒後9年間、指定された医療機関・企業に勤めることを条件に、3000万円程度の学費を奨学金によって1100万程度まで減免することが可能です。
国公立医学部の360万円程度の学費と比べると3倍近くありますが、私立医学部の中ではかなり通いやすい大学といえます。
順天堂大学
順天堂大学医学部は東京都文京区本郷2-1-1に所在する私立大学医学部であり、学費は奨学金なしでも6年間合計で2080万円と私立医学部の中ではかなり安く、通いやすいと言われています。
また、奨学金制度が豊富であることから優秀だが経済的に私立大学医学部は厳しい学生にとっては本当におすすめです。
以下は順天堂大学医学部の奨学金制度の一覧です。
特待生
一般選抜A方式合格者のうち、成績上位10名に適応。
1年次は入学金200万円のみ、2年次以降は各年100万円となり、学費総額は700万円にまで抑えられます。
ただし在学時の成績によって減免額は変更となる可能性があります。
基礎医学研究者養成奨学金
将来、研究医を志す学生の支援を目的とした奨学金で、研究医特別選抜の入学者で、大学入学後にMD-PhDコースに進んだ学生に適応。
月額最大10万円を貸与されます。
東京都地域医療医師奨学金
東京都地域枠選抜の入学者10名に適応され、修学費2080万円全額と生活費として月額10万円の、合計2800万円を貸与されます。
新潟県医師養成修学資金
新潟県地域枠選抜の入学者2名に適応され、月額30万円の、合計2160万円を貸与されます。
茨城県地域医療医師修学資金
茨城県地域枠選抜の入学者2名に適応され、月額25万円の、合計1800万円が貸与されます。
千葉県医師修学資金・埼玉県医師育成奨学金・静岡県修学研修資金
各地域枠選抜の入学者に適応され、月額20万円の、合計1440万円が貸与されます。
国際医療福祉大学
国際医療福祉大学医学部は千葉県成田市公津の杜4-3に所在を置く、新設の私立大学医学部です。
もともとこの大学は私立医学部の中で一番学費が安く、6年間で1850万円と唯一2000万円を切ることで有名です。
一般入試で成績上位50名に入れば医学部特待奨学生奨学金制度を受けることができ、入学金150万円の免除および6年間で最大1400万円を給付されます。
したがって医学部特待奨学生に選ばれれば、6年間の学費合計は300万円となり、国公立医学部よりも低額な学費で医学部に通学できることがポイント。
また給付型なので将来のキャリア形成にも影響がないことは非常に大きいと思います。
奨学金の注意点
高額な学費を必要とする医学部、特に私立医学部に一般家庭から通うには経済的に厳しいので、奨学金制度に頼る学生も多いでしょう。
しかし安易に奨学金制度を利用しようとするのは危険で、奨学金制度の注意点をきちんと踏まえておくことが必要です。
たとえば特待生制度では6年間継続しようとすると、入学後は成績上位に入る必要があります。
1年目の特待生は1回の入試成績のみで決定しますが、2年目以降は入学後の複数のテストで高得点をとる必要があり大変だということを認識しておくべきです。
医学部の学生たちはみんな優秀な学生なので、その中で常に上位をキープし続けるのは想像以上に難しいことだと思います。
また、地域枠や医療機関・病院からの奨学金などは万が一留年したらストップしてしまいます。
医学部は進級も厳しい大学が多く、学生の多くは自分は留年しないだろうと思っていますが、毎年一定数の学生が留年していることを考えると油断は禁物です。
また、地域枠では卒業後の進路がかなり制限されることにも注意してください。
自分がなりたい診療科や行きたい地域・病院が医学部入学後に決まったとしても、その意向が反映できるかは怪しい部分があります。
違約金を払えばいいと考える学生もいますが、地域枠離脱は近年大きな問題となっており、マッチングの際に病院側が地域枠離脱した学生を採用するとペナルティが課されることから採用に不利に働くのでおすすめしません。
将来のキャリア形成を柔軟に組みつつ、医学部の高額な学費を奨学金で補いたいと考えるなら地域枠以外の制度を活用するといいでしょう。
まとめ
高額な学費を必要とする医学部では、一般家庭では通えないのかと思われがちですが、そんなことはありません。
実際は多くの学生が何らかの奨学金を利用しながら通学しており、大学でも奨学金制度がどんどん充実していってます。
今回取り上げた地域枠・特待生制度・医療機関からの奨学金・矯正医官修学資金以外にも、医学部通学をフォローしてくれる奨学金制度はたくさんあります。
自分の家では医学部は経済的に無理なのではないかとあきらめる前に、まずは志望校の奨学金制度について今一度調べてみることをおすすめします。
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