2018年に発覚した医学部入試における女子差別について、その後の実施状況は改善したのかについて検証しています。

不正入試は解消した?女子の医学部受験と進路を解説

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不正入試は解消した?女子の医学部受験と進路を解説
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東京医科大学「不正入試」事件の発覚から3年、現在の女子の医学部受験生を取り巻く事情はどう変化したのでしょうか。

2021年現在、コロナ禍ということもあり、世間の医学部への関心は再び高まりを見せています。

この記事では、現役の地方国立大学の医学部6年生である筆者が、医学生としての目線から、女子の医学部受験生と医学生を取り巻く事情に迫っていきます。

どのような環境にある女子が医学部に合格しやすいのか。医師としての進路を考える際の女子特有の悩みは何か。

これらの焦点から、周囲の医師・医学生の意見も交えながら、現状を調査した結果を踏まえて解説していきます。

不正入試発覚から3年!女子の医学部受験生や医学生を取り巻く事情は?

女子受験生の勉強風景

女子受験生の勉強風景

当時の東京医大「不正入試」事件を振り返る!その原因は?なぜ女子を差別?

2018年7月、当時の文部科学省の局長が、息子を東京医科大学医学部に裏口入学させてもらう代わりに、助成金などの優遇を行なっていたという収賄事件が発覚しました。

それを契機に、他にも全国の複数の医学部が、女子や浪人生が不利になる形での不正な減点や得点調整、いわゆる「不正入試」を行っているということが明るみに晒されることに。

それまでは、特定の医学部において、面接点などのいわゆる「ブラックボックス」で、属性による減点などの得点調整がされているという情報が、あくまで噂として存在していたものの、大学側がその不正を認めることは一度もありませんでした。

そもそもの医学部受験で女子差別や年齢差別が起きる背景として、医師が過重労働を担うことによって日本の医療制度がぎりぎりの状態で運営されているという事実があります

しかしながら、「女性医師は、出産・子育てなどでワークライフバランスを重視せざるを得ないので、女子の入学者が増えると困る」といった大学側の論理は、不正入試を正当化する論拠になりません。

令和時代に突入してもなお、医学部受験における「男女差別」が現存していたという事実は、世間を大いに震撼させ、ジェンダー平等に関する議論が加速するきっかけにもなっています。

不正入試は解消されたか?不適切だと指摘された10大学は……

文部科学省は2019年6月、「医学部医学科における不適切な事案の改善状況等に関する調査結果」を公表し、不適切な事案等を指摘された10大学について、2019年度入学者選抜の改善状況をまとめました。

女子合格率に対する男子合格率の比率について、順天堂大学など、2018年度、その値が有意に1を超えていた大学では、2019年度では、全てがほぼ1に近い値となった旨が掲載されていた。医学部受験における「男女差別」について、数字の上ではという但し書きの上ではあるが、文部科学省の介入によって一応の収束を見たとことが分かります

しかしながら、不正入試を誘発したそもそもの原因である、「医師の過重労働」については、解決の兆しが見えていないままであり、女子の医学部受験や医学生を悩ませる理由の1つであり続けていることに。

どのような女子が医学部に合格しやすい?

合格祈願の絵馬

合格祈願の絵馬

幼少期からの継続的な勉強が必要!やっぱり家庭環境や学校が大事?

「国公立なら東京大学や京都大学の非医学部レベル、私立なら早稲田大学や慶應義塾大学の非医学部レベル」とその難しさが形容されることの多い医学部受験ですが、これを突破するためには、女子も男子も、受験生本人が高い学力を身につけていることが前提となります。

幼少期から難関大学や医師を志し、幼少期から勉強に躓くことなく、小中高と優秀な状態を維持することで初めて、晴れて医学部に現役ないしは1浪で合格という王道のルートが実現できるというわけです。

しかしながら、このルートを実現するためには、様々なハードルが待ち構えています。

当の本人が勉強を人一倍頑張りたいと幼少期から思いつづけ、それを実践しつづけていないと、高い学力を身につけることはできません。

なぜならば、医学部受験において必須となる数学や英語といった科目は小学校や中学校からの積み上げ学習によるものであり、一朝一夕での習得は不可能に近く、特に女子受験生の場合は数学が苦手な人が多いです。

また、幼少期の人格形成を支えるのは、家族や周囲の環境が大きいのも事実

もし、家族に難関大学の受験の経験があったり、家族が医師であったならば、子供は早いうちから勉強の必要性に自ずと気がつきます。

また、中学受験を乗り越え、都心の中高一貫校に進学するなどして、より優秀な同級生に囲まれる環境となれば、より一層勉強の必要性を本人が実感することになるわけです。

医学部の学費はかなり高額!大学6年間でいくら?

また、医学部の学費は、国公立であれば6年間で約300万円と、非医学部と大差ないものの、私立であれば6年間で約2000〜5000万円と、非常に高額。

私立の医学部の学費は、よほどの担保を持った上で奨学金を申請するなどしない限りは、裕福ではない一般の家庭が進学を支援することは困難でしょう。

したがって、一般家庭の受験生は、「国公立ないしは学費が無料である防衛医科大学か自治医科大学しか受験できない」「学費の安い大学(人気で倍率が高い)しか受験できない」などと選択肢が限られてしまいます。

一般に国公立大学の受験では、私立大学のそれよりも科目数が多く、前期と後期の2回しか受験機会がありません。

その点で、一般家庭の医学部受験生は、志望できる大学が少なく、そもそも大きな不利を抱えてしまっています

逆に裕福な女子受験生は、学費という制約がないため、全医学部から自由に選択することが可能です。

【結論】着実な努力が大事!浪人という選択も

それでは、そもそも勉強熱心な環境や裕福な家庭に育っていないと医学部を目指すことができないかといえば、決してそういうわけではありません

全体の割合としては多い方ではありませんが、地方の公立高校の出身の女子学生や予備校で3浪以上のいわゆる「多浪」の末、医学部に合格したという女子受験生も、昔から一定数存在しています。

特に近年は、医学部受験における「男女差別」の解消も相まってか、ここ数年、女子の比率が高まってきています。

医師としての勤務に義務年限が課される代わりに比較的学費が安くなる「地域枠」を設ける大学が近年増えてきており、地元から医学部へ進学しやすいということで、女子の受験生にも「地方から医学部を目指す」といった目標を持つ人が増えてきています。

また、各家庭におけるジェンダー論が変化し「医学部に合格するまで浪人する」といった選択に寛容的になりつつあり、女子の医学部受験生の割合も増加。

たとえ浪人しても滅気ずに成績を上げ続けることで、医学部に合格することは決して不可能ではない時代になりつつあります

女性医師としての進路はどうする?

女子医学生の進路を表現した画像

女子医学生の進路を表現した画像

一向に進まない医師の働き方改革!過労死ラインの2倍も働いて「アタリマエ」?

この記事の冒頭でも紹介したように、医学部受験における「男女差別」について、数字の上では一応の収束を見たと思われるものの、不正入試を誘発したそもそもの原因である、「医師の過重労働」については、解決の兆しが見えていないままです。

厚生労働省は、2019年、「医師の働き方改革を議論する有識者検討会」を開き、医師の残業時間の上限規制を最大で年1860時間とする報告書案を発表しましたが、この数字は、一般労働者の過労死ラインの2倍に相当する時間です。

「働き方改革」を謳った検討会ですら過労死ラインを容認してしまっている姿勢からも、医師の働き方改革が一向に進んでない現状が窺えます。

医学部へ目指しやすくなった女子ですが、卒業後に医師にあった場合は、まだまだキャリア形成で悩みが絶えません。

人気を集める「マイナー科」!楽をしたいのか?それとも仕方ないのか?

結婚・出産を経験する女子の受験生や医学生にとっては、この現状に悩む割合が男子に比べてかなり多いです。

医師としての成長を期待される時期に、結婚や妊娠の適齢期が重なってしまい、このままでは、人生設計もままならないといった彼女たちの悲痛な叫びは、容易に想像できます。

女性特有のライフイベントである「出産」に伴う産休や、子育てに伴う育休などのライフイベントなども考慮すると、男性以上にワークライフバランスを重視せねばならないという現実があります。

そのような中で女子医学生たちの注目を集めるのが、いわゆる「マイナー科」です。

「マイナー科」とは、腎臓内科や消化器外科など、内科や外科に分類されるいわゆる「メジャー」な診療科に比べて、比較的「マイナー」である診療科を指す俗語。

眼科や耳鼻咽喉科や皮膚科などを指すが、その線引きは明瞭ではありません。

しかしながら、医師国家試験のテキストや予備校を始め、医学生や医師の界隈では広く受け入れられている言葉です。

マイナー科では、容態の急変や救急の患者などの時間外対応が比較的少なく、ワークライフバランスを保ちやすく、開業も比較的容易なため、近年は男子医学生からの関心も高くなっています。

「メジャー科」はどうなの?興味があっても永久就職は躊躇しちゃう?

一方で、医療制度の柱となるいわゆる「メジャー科」では、医師不足が常態化しており、医師の過重労働を前提としてぎりぎりの状態で運営が進められており、その現実が浮き彫りとなりつつあります。

「働き方改革」も、前述のような体たらくであり、多くの女子医学生にとって、いくらその領域に興味を持ったとしても、永久就職先としての魅力は少なく映ってしまう他ありません。

このような転機から「女性医師はマイナー科ばかりに行き、メジャー科の医師が足りなくなるので、女子の入学者が増えると困る」といった旨で、医学部受験における「女性差別」を正当化する論説をよく目にしました。

しかし、そこではそもそも医師の過重労働が問題であるといった、そもそもの「原因」に触れられはするものの、なぜかその原因を解消を待つことなく、倫理に背いた「女性差別」といった禁忌肢を安易に採択してしまっていることが問題です。

現状、女性医師がマイナー科ばかりに行くという批判はあれど、それは彼女らが罪を背負うべきものでは決してではありません

正しくは、「女性医師がマイナー科だけでなくメジャー科にも行きやすい、そんな医師の労働環境が必要である」となるべきであるからです。 

今回の記事のまとめ

女子の受験生が医学生を取り巻く現状は依然厳しい!何よりも過重労働の解決を!

不正入試から3年、医学部受験における「女性差別」は、数字の上で一応の収束を見せたものの、そもそもの「原因」である医師の過重労働が改善される動きは、未だ見られていません。

医学部受験を乗り越える上では、家庭環境や学校などが大事であり、高学歴かつ裕福な女子受験生が合格しているのが顕著。

しかし、それ以外の女子受験生も、努力を着実に重ねていくことで、合格を勝ち取っていくことも不可能ではありません。

また、医学部に合格しても女子学生には、医師業界の働き方改革が遅れれており、キャリア形成でまだまだ悩みが絶えない状況です。

男女関係なく働きやすい環境を構築することが、大きな課題となっています。

 
 
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