医師国家試験合格率が高い理由と各大学の合格状況について解説しています。

医学部医学科の医師国家試験合格率が高い理由を紹介

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医師国家試験合格率は90%台!その理由を医学部の特徴を踏まえて解説
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医学部医学科の最後の登竜門が2月に実施される医師国家試験に合格して、医師免許を取得することです。

医師免許を取得できないと、卒業後の初期臨床研修に参加できないため、医学部によっては大学をあげてサポートすることもあります。

また、毎年合格状況を大学別に公表されますが、医師国家試験合格率は他の資格試験に比べて非常に高いのが特徴。

なぜ、そこまで国家試験合格率が高くなるのか、医学部という特徴を踏まえならその理由を解説していきます。

医師国家試験は合格率が高い!

医師国家試験は合格率が高い!

医師になるうえで最後にして最大の関門となるのが、大学卒業前に待ち構える医師国家試験です。

医師国家試験によって得られる医師免許は「三大国家資格」と称されるほど価値のあるものであり、司法試験・公認会計士試験と並び難易度が高いものとなっています。

まずは、2022年度の医師国家試験の概要を見ていきましょう。

2022年度医師国家試験の概要

試験日程 2022年2月5日(土)、6日(日)
合格発表 2022年3月16日(水)
受験者数 10,061名
合格者数 9,222名
合格率 91.7%

2022年度の試験結果を見て分かるように、医師国家試験合格率は9割越えと非常に高くなっています。

受験者が1万人を超えていながらもこの合格率であるのは、他の資格試験と比べても非常に高い数字です。

同じような難易度の資格試験で国家試験合格率の例を挙げますと、歯科医師国家試験は60%台、司法試験は40%台、公認会計士試験は10%前後となっていることからも、その国家試験合格率の高さがうかがえることでしょう。

では、なぜ医師免許の国家試験合格率は高いのか?

この記事ではその理由を解説していきます。

大学ごとの医師国家試験合格率(国公立大学・私立大学)

大学ごとの医師国家試験合格率(国公立大学・私立大学)

理由を説明する前に、医師国家試験では医学部ごとに合格率が公表されていますので、2022年の国家試験合格率をランキング形式で紹介していきます。

なお、こちらの表は新卒(医学部在籍中の受験者)・既卒(大学卒業済の受験者)の両方を含みます。

医学部別の医師国家試験合格率ランキング【2022年】

順位(総合) 順位(国公立大学のみ) 順位(私立大学のみ) 大学名 合格率(%)
1 1 自治医科大学 100
2 1 筑波大学 99.3
3 2 横浜市立大学 98.7
4 2 東京慈恵会医科大学 97.4
5 3 東京医科歯科大学 97.3
6 3 近畿大学 97
7 4 東北医科薬科大学 96.8
8 4 浜松医科大学 96.8
9 5 秋田大学 96.7
10 6 大阪公立大学 96.6
11 7 東北大学 96.6
12 5 慶應義塾大学 96.5
13 6 兵庫医科大学 96.5
14 7 順天堂大学 96.4
15 8 名古屋市立大学 96.1
16 9 千葉大学 96
17 8 昭和大学 95.7
18 9 藤田医科大学 95.7
19 10 佐賀大学 95.4
20 10 北里大学 95.3
21 11 群馬大学 95.2
22 12 三重大学 95.2
23 13 山梨大学 95.2
24 14 和歌山県立医科大学 95.2
25 15 信州大学 94.7
26 16 福井大学 94.7
27 11 関西医科大学 94.6
28 12 大阪医科薬科大学 94.5
29 13 産業医科大学 94.3
30 14 日本医科大学 94.2
31 15 福岡大学 94.1
32 17 岐阜大学 93.9
33 16 東京医科大学 93.7
34 18 奈良県立医科大学 93.5
35 19 防衛医科大学校 93.5
36 20 大分大学 93.4
37 21 名古屋大学 93.3
38 22 新潟大学 93.3
39 23 大阪大学 93.2
40 17 獨協医科大学 92.8
41 24 滋賀医科大学 92.4
42 25 愛媛大学 92.2
43 26 徳島大学 92.2
44 27 福島県立医科大学 92.1
45 28 熊本大学 92
46 18 埼玉医科大学 92
47 29 山口大学 92
48 19 聖マリアンナ医科大学 91.8
49 30 京都府立医科大学 91.5
50 31 島根大学 91.5
51 32 長崎大学 91.5
52 33 北海道大学 91.5
53 34 琉球大学 91.4
54 35 旭川医科大学 91
55 36 香川大学 90.8
56 37 神戸大学 90.8
57 20 愛知医科大学 90.7
58 38 岡山大学 90.7
59 21 杏林大学 90.7
60 22 川崎医科大学 90.6
61 39 広島大学 90.3
62 23 岩手医科大学 90.2
63 24 日本大学 90.2
64 40 富山大学 89.9
65 41 九州大学 89.7
66 42 京都大学 89.3
67 43 金沢大学 89.2
68 25 帝京大学 89
69 26 東邦大学 89
70 27 東京女子医科大学 88.8
71 44 宮崎大学 88.8
72 45 山形大学 88.2
73 46 札幌医科大学 87.8
74 47 東京大学 87.8
75 48 鹿児島大学 87.1
76 49 高知大学 87
77 50 弘前大学 87
78 28 金沢医科大学 86.7
79 51 鳥取大学 85.6
80 29 東海大学 82.8
81 30 久留米大学 77.8

※防衛医科大学校は国公立大学に含んでいます。

※国際医療福祉大学は医学部医学科の募集開始から日が浅いため、受験者がいません。

表のとおり、81大学中62大学で医師国家試験合格率が90%を超えています。

一方で、東京大学や京都大学、九州大学など医学部最難関の大学が合格率8割台となっており、入試難易度と国家試験合格率が比例しているわけではないことも分かります。

医学部の国試合格率が高い理由

医学部の国試合格率が高い理由

理由①:医学部医学科は入試難易度が高い

さてここからは、医師国家試験合格率がなぜ高いのか、理由についてみていきましょう。

医師国家試験合格率が高い一つ目の理由は、そもそも医学部医学科に入る難易度が高いということです。

他の国家資格、たとえば看護師国家試験や公認会計士試験などに比べ、医師国家試験を受験するには他の学部より狭き門である医学部医学科への合格が必要になります。

そして医学部医学科は受験難易度が高いことから、合格者として開成高校・灘高校といった名門校から来た学生など、各地方のエリート高校生たちが集まってきています。

そのような学生たちは、計算や暗記の能力が高かったり、論理的思考力に優れていたりするほか、高校までの受験勉強で自分に合った勉強法を身につけていることが多く、勉強の効率も高いのです。

理由②:医学部の6年間で勉強や情報入手の仕方を身につけられる

医師国家試験合格率が高い二つ目の理由は、医学部6年間の学生生活の特殊性にあります。

まず、他の学部と違い、医学部医学科は試験の量・勉強量が圧倒的に多いです。

筆者の経験した例を挙げると、低学年のうちにPowerPointのスライド1000枚相当の試験が10日間に4度あったり、学年が上がってからも2週間ごとにスライド2000枚ほどの試験が2週に一回、半年以上続くなど、その密度は医学部医学科に入学した学生たちでも音を上げる程です。

それらの試験に合格し続ける中で、学生たちは医学の勉強の仕方が分かってきます。

また、その試験は医師国家試験の過去問に基づいた作問がされることもあり、試験勉強をすることで自然と医師国家試験の勉強に繋がっているのです。

さらに、その6年間で得られるものは勉強方法や知識だけではありません。

同期の学生や先輩、教授陣などから、数多くの情報を得ることができます。

例えば、「医師国家試験はどれほど前から勉強するべきか」「どの教材を使うべきか」などの情報です。

医学部はキャンパスが異なり、医学部独自の人脈が強く形成されることで、これらの情報を学生が自然と手に入るようになっています。

このこと、つまり「味方が多い事」で国家試験合格率が高いということは、他の資格試験にはないことかもしれません。

理由③:医学系教育コンテンツの充実

医師国家試験合格率が高い三つ目の理由は、医学系の教育コンテンツが充実しているというものです。

主要なものとして、各出版社から以下のコンテンツが提供されています。

コンテンツ名 用途 出版社
イヤーノート 医師国家試験対策の参考書 メディックメディア
「病気がみえる」シリーズ 医療関係者向けテキスト メディックメディア
Q-assist 医師国家試験対策の映像授業 メディックメディア
クエスチョン・バンク 医師国家試験過去問 メディックメディア
medu4 医師国家試験過去問サイト medu4社
MEC.net 医師国家試験対策学習サービス MEC社
M3E medical 医師国家試験対策学習サービス TECOM社

これらのコンテンツは、医学部内で情報共有されており、多くの人は国家試験受験の1~2年前、早い人だと3年前から購入・利用が始められています。

どのコンテンツも非常に高品質であり、学習に役立つものばかりだというのが、医学部に所属する学生の共通認識になっていると言えるでしょう。

さらに、それ以外にも各会社で国家試験(またマッチング等についても)対策のサポートが充実しており、各社との渉外役を担う学生を通し、医学部内で都度情報共有が為されるので、学生の側からしても利用しやすいコンテンツとなっています。

このコンテンツの使いやすさ・充実度は、確実に医師国家試験合格率の高さに貢献していることでしょう。

理由④:国家試験合格率を高める大学側のカラクリ「受験させない」

医師国家試験合格率が高い最後の理由は、少しダークなものになります。

それは、「留年や卒業試験不合格・放校などで医師国家試験をそもそも受験させない」というものです。

先程示した2022年の医師国家試験合格率ランキングでは、合格率を「合格者数/受験者数」で示しました。

しかし、受験の前に出願をする必要があり、それを行った人数、すなわち「出願者数」も厚生労働省により示されています。

その資料からは、出願者数に対して受験者数が少ない、つまり医師国家試験に出願したのに受験しなかった学生が、全国あわせて200名以上いることが分かります。

例えば、医師国家試験合格率で何年もの間ランキング1位である自治医科大学は、新卒での出願者131名のうち、6名(4.6%)が受験していません。

他にも、国公立大学で合格率が最も高かった筑波大学でも2名が出願したにもかかわらず受験しなかったり、川崎医科大学では出願167名のうち50名(30%)が受験しませんでした。これら「出願したのに受験しなかった」学生の数は、私立大学の方が多い傾向があります。

その理由としては、国家試験前に事故や病気にかかったことも考えられますが、国家試験の前に行われる卒業試験で一定の成績を下回った学生を留年させる・放校させるなどして国家試験を受験させず、医師国家試験合格率を上げるという大学側の戦略もあると思われます。

(一方で、留年した学生には一年間更に勉強してもらうことにより、より十分な知識を持って医師になってほしい、という見方もできます。)

ただし、それらによって国家試験合格率が10%以上も大きく変動しているわけではありませんので、やはり医師国家試験合格率が高い根本にあるのは「学習環境の充実」と「受験者の勉強・情報入手スキル向上」が主要因であるといえます。

まとめ:医師国家試験合格率の高さには医学部の学生の努力がある

この記事では、医師国家試験合格率がなぜ高いかについて見てきました。

ここ3年(2020・2021・2022)は三年連続で医師国家試験合格率は91%を超え、10年前よりも確実に合格率が上がっています。

その根底にあるのは、医学部の6年間を通した、国家試験対策になるようなスキル向上、そしてここ10年での目まぐるしい学習コンテンツの充実です。

これから医学部に入学する皆さんも、医学部6年間の学習を大切にして、医師国家試験に臨みましょう。

ここまでご覧いただきありがとうございました!

 
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