チーム医療が叫ばれる昨今、医師だけでなく他の医療スタッフと連携して治療に当たることが重要視されています。
これに伴い、医学部には医学科だけでなく保健学科という学科が組織されていることが多いです。
医学部保健学科とはどんな勉強を行い、卒業後はどんな進路が期待できるのかについて詳しく解説していきます。
医学部の医学科と保健学科との違い
医学部には医学科と保健学科がありますが、これらはどのような面で違いがあるのでしょうか?
詳しくみていきます。
学問
医学部医学科は簡潔に言ってしまえば、医師を養成するための学科です。
解剖学や生理学に代表される、人体における正常構造とその働きについて学ぶ基礎医学や、各診療科ごとの治療法や疾患の特徴について深く学ぶ臨床医学、公衆衛生の観点から社会全体での疾患を予防する社会医学などを学ぶ場です。
人体の正常・異常や社会の仕組みなどを幅広く学習するため、6年制であることが特徴です。
一方医学部保健学科は医学科と同様に基礎医学を学ぶ一方で、どちらかというと保健福祉という面の講義が多い印象です。
専攻にもよりますが、看護学を専攻するとや老年看護学や精神看護学など、治療というよりも「ケア」に重きを置いたものが多い印象です。
また栄養学や食品衛生学など、普段の健康についての科目も学習します。
進路
医学部医学科は先ほども述べましたが医師養成の場であるため、ほとんどすべての卒業生が医師として就職します。
一部には医系技官として厚労省に勤め、国全体の医療行政を扱う職務に就く人もいますし、ヘルスケア系の企業を立ち上げる人もいます。
医学部保健学科は看護師や放射線技師、臨床検査技師、理学・作業療法士など進路が多岐にわたります。
後で詳しく述べますが、保健学科の中にも専攻があり、「看護学専攻」「放射線技術科学専攻」「検査技術科学専攻」「理学療法学専攻」「作業療法学専攻」があり、どの専攻を選ぶかで将来の進路は変わります。
また、大学院に進学する人も多く地域保健を扱う研究などを行っています。
資格
医学部医学科で取得するのは当然、医師免許です。
医師国家試験を合格すると、厚生労働大臣によって交付されます。
医学部保健学科では専攻によって得られる資格は様々ですが、各国家試験に合格することで看護師免許や助産師免許・診療放射線技師免許・臨床検査技師免許・理学療法士免許・作業療法士免許が交付されます。
保健学科の魅力
医学部保健学科では最先端の医学・保健学を学べるため、もともと人体に興味がある場合は4年間、充実したカリキュラムで学習ができます。
また、なんとなくで選んでしまった場合も、栄養学や食品衛生学は日常で使う豆知識などとしても楽しめる内容なので、興味をひかれやすい学問を扱っています。
さらに、保健学科を卒業後はいわゆる「コメディカル」と呼ばれる職業に就くわけですが、医師以上に患者さんのQOLを高めることに尽力するので、患者さんの笑顔を見やすい職業に就くことができるのも保健学科の魅力です。
保健学科で設置されているコース
看護学
保健学科看護学専攻では病気によって伴う痛みや苦しみを取り除く、もしくは和らげることを目標にする看護学を中心に学びます。
学問としては成人看護学、母性看護学、小児看護学、老人看護学などに分けられ、それぞれの特性に沿った学びを得ることができます。
卒業後は看護師国家試験受験資格を得て、看護師国家試験に合格すると看護師として各病院に就職します。
近年の医療現場ではチーム医療が主導となっていますが、その中でも最も患者に対して距離の近い看護師は非常に重要な役職です。
放射線技術科学
保健学科放射線技術科学専攻では、近年の医療現場では欠かせないCT・MRIといった画像診断や、急速に進歩する放射線治療に対応できる放射線技師を養成するために設立されています。
基礎放射線技術学や医用放射線技術学といった学問が中心で、前者は医療現場で使われている機器の原理や測定方法の理解、後者は放射線による障害をできるだけ抑える方法など実用的な面について学習します。
放射線診断や放射線治療の近年の進歩は目覚ましく、腫瘍や出血の早期発見や低侵襲のがん治療が行えるようになっており、放射線技師は最先端の医療を担う非常に重要な役職といえます。
検査技術科学
保健学科検査技術科学専攻では、医療における疾患の予想をたてる際に必要となる臨床検査全般を扱っています。
生体成分の質・量的変動をみる化学検査や、血液中の赤血球・白血球・血小板などの異常を見る血液検査、感染症に対する微生物検査、組織の形態的変化をとらえる病理検査など様々な検査が病院内では常に行われていて、こうした生体に対する検査を行う技師を養成します。
様々な検査をすべて正確に行えるようにしなくてはならず、その検査結果をもとに初期診断をつけるので、診断の際に非常に重要な役職であることは言うまでもありません。
理学療法学
保健学科理学療法学専攻はリハビリテーション医療の最前線で、疾病や障害を持った患者さんのQOLを上げるために、運動機能や生活機能の改善を目標とする理学療法士を養成しています。
リハビリテーションというだけあって、特に人体の骨・筋肉・神経といった運動器に関連する運動器解剖学は徹底して頭にたたきこむ必要があります。
日本は高齢化が急速に進んでいるため、単なる疾患の治療だけでなく、高齢化による運動機能の低下が深刻です。
したがってよりいっそう理学療法士の需要は高まっていくことが予想されています。
作業療法学
保健学科作業療法学専攻では心や体に障害を負った際に生じる日々の生活の制限を、食事や衣服の着替えといった作業活動を通して制限を軽減し、周囲の環境を調製することでより患者のQOLの向上を図る作業療法士を養成します。
運動や感覚といった基本的動作能力、食事やトイレといった応用的動作能力、就労・就学といった社会的応用能力の3つを軸に、これらを改善することで患者さんの、その人らしい生活を送れるように努力します。
在宅ケアや地域社会に根付いた医療を行ううえで、必要不可欠な存在であるといえます。
入試難易度は?
医学部医学科は大学受験最難関といわれていますが、同じ医学部の保健学科はどれほどの難易度なのでしょうか。
国公立を中心に偏差値が高く合格難易度の高い大学もある
東京医科歯科大学医学部保健学科は偏差値60、名大医学部保健学科は偏差値58と、やはり都心の東京医科歯科大や旧帝大の医学部保健学科はやや偏差値が高く、合格難易度が高いと言えます。
医学部医学科の偏差値ランキングと比較的同様で、立地や格などで偏差値が決まっている印象があります。
面接試験がない大学もある
医学部医学科では全国すべての大学で面接試験が実施されており、医学部再受験生にとってはやや難易度が上がっています。
しかし、医学部保健学科の中には面接試験を行っていない大学もいくつかあります。
先に述べた名大医学部保健学科は、試験科目が外国語と理科、数学、国語の4科目で、面接試験は実施していません。
また、同じく旧帝大である北海道大学医学部保健学科では数学・外国語・理科の3科目であり、面接試験を実施していません。
学科試験は理科一科目の大学もある
医学部医学科のほぼすべての大学で、理科を二科目受験することが義務づけられていると思います。
しかし、医学部保健学科では一部の大学で理科一科目で済ませることが可能です。
岡山大学医学部保健学科では二次試験の理科で物理・化学・生物のいずれか一つを選べばよいとされています。
医学部保健学科が向いている人はどんなタイプ?
それでは、いったいどのようなタイプの人が、医学部保健学科に向いているのかということについて、解説していきます。
臨床医療に興味がある人
そもそもの大前提として、医学部保健学科のどの専攻に進むとしても、看護学専攻であったり理学療法学専攻であったりと、医療に多かれ少なかれ医療に関わることにはなりますから、医学に興味があるということが最も重要な点です。
では次に、医師と保健学科を卒業してなることのできる職業との違いは何かということについて、考えていきましょう。
医師は患者さんの診断や、治療方針などに満遍なく関わることになります。
保健学科を卒業後になることのできる職業は、例えば看護師であれば入院患者さんに最も接することが多く患者さんのケアを軸としており、理学療法士であればリハビリテーションに特化している、といった感じで特定の領域に重点的に関わることになります。
この点が医師と、保健学科を卒業した結果なることのできる職業との大きな違いとなっています。
従って保健学科に向いているタイプというのは、医療に興味はあるが患者さんに満遍なく関わる医師というよりは、特定の領域に特化して、医療業界に貢献したいといった志を持っている人ということになります。
学生時代以降も勉強し続けることができる人
次にこれは医学部医学科と医学部保健学科のいずれでも求められることですが、生涯に渡って勉強することができる人が、医学部保健学科に向いていると言えるでしょう。
医学という領域は日々進化しており、それに伴って看護師であれば患者さんを看護するにあたってどのような点に注意するか、理学療法士であればリハビリをする時はどういった方法が最も効果的で目の前の患者さんには一体どの方法が合っているのかなどといった情報が驚くべき早さで更新されていきます。
そういった情報をしっかりとキャッチアップしていかなければ、医療職というものは務まりませんから、保健学科に入るからには学生時代だけでなく就職して社会人となってからも毎日しっかりと勉強して自分の知識をアップデートしていくことが求められます。
この日々勉強といった面が、意外と就職するまで忘れ去られており、就職してから自分には合っていなかったのではないかと後悔する人も多いです。
従って、自分が向いているかどうかをしっかりと熟考しましょう。
以上まとめると、医学部保健学科に向いている人は
- 医療に興味があり、特定の領域に特化して、医療業界に貢献したいといった志を持っている人
- 日々勉強して知識をアップデートしていく覚悟のある人
ということになります。
医学部医学科に合格できない場合選択肢になり得るか
医学部医学科は言うまでもなく、大学受験界の最難関です。
一方で医学部保健学科は偏差値60まで行く大学もありますが、医学部医学科と比べるとやはり合格難易度自体は低めです。
そのため毎年一定数、学力があと一歩及ばずに医学部保健学科に進学する学生もいます。
実際学力的には医学部保健学科は選択肢として適していると考えられ、医療職に就くことは可能です。
しかし、医学科を目指す学生の多くは医師になりたいという気持ちが強く、そのため結果的に医学部医学科を再受験する学生もいるようです。
学力が足りない場合に医学部保健学科を受験選択肢として入れるのはいいですが、安直に決めない方がいいと思います。
まとめ
今回は医学部保健学科について焦点を当てて解説していきました。
医学部医学科は詳しいけど、医学部保健学科についてはあまり知らなかったという人も多いはず。
医学部保健学科では様々な専攻があり、どれも現代医療において重要な役割を果たしているため、やりがいのある仕事であると思います。
医学部医学科を漠然と目指すだけでなく、医学部保健学科で学ぶことなどを参考にし、将来の自分を想像してほしいと思います。
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